泥花 公演情報 劇団桟敷童子「泥花」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    泥花に将来を託す悲しさに胸いっぱい
    7日午後、錦糸町のすみだパークスタジオで上演された劇団桟敷童子・炭鉱三部作の第二作目『泥花』を観てきた。劇団桟敷童子はこの数年頻繁に観始めた劇団なのだが、上演している炭鉱三部作『オバケの太陽』『泥花』『泳ぐ機関車』の初演は自分が観始める以前の作品で、今回観るのが初めて。作品の事前評価の参考になるのは、フライヤーにあった『オバケの太陽』第15回鶴屋南北戯曲賞最終候補作品、『泳ぐ機関車』第16回鶴屋南北戯曲賞受賞その他の受賞歴と、初演の年度。それによると、各種賞の候補にもなっておらず初演が他の作品よりも早い2006年という『泥花』は、他の2作品より完成度が劣る作品のような印象を持って上演に臨んだ。しかし、この先入観は大きな誤りだった。笑わせる点と泣かせる点の振幅の大きさ、焦点のハッキリしたテーマ提示は前回『オバケの太陽』を上回っており、見応えのある作品であった。

    ネタバレBOX

    赤堀炭鉱で落盤事故を起こし、その責任のため行方不明になり親無し子として地元にいられなくなったヤマ主の長女・千鶴、次女・美代、長男・ハジメの三人は、母の親戚を頼り一夏だけ炭鉱町鶴山で過ごすことになる。将来を悲観しつつもパートで働く千鶴、洋裁の勉強をしたい美代、そして鶴山の親戚に預けられることになったハジメ。親戚や町の運送会社の社長や従業員、食堂の夫婦を巻き込んで、炭鉱生き残りの難しさと兄弟姉妹3人の今後への不安。ハジメは、死に際に観ることの出来て望みを叶えてくれる泥花に姉たちと自分の将来を託そうと、浮浪少年敏と自殺未遂事件を起こしたりする。そして夏が終わり、結局3人は別れ別れに。ハジメは、泥花を見るために先立った敏に、自分たちの将来の幸福を託すのだった。
    炭鉱閉鎖の相次ぐ時代の暗い話を、食堂経営の妻と運送会社社長の浮気を絡めながら特に明るく、特に社会問題点に突っ込む舞台。話の内容は、実はかなり悲しく奥深い。その救いともなる泥花も、死が前提。よく、ここまでの舞台に仕上げたものだと感心した。

    今回の舞台は、飛び抜けたヒーロー或いはヒロインはいない。ハジメ役の外山博美の奮闘と、前作でも活躍した池下重大扮する運送会社従業員、それに浮浪少年・敏(鈴木めぐみ)が舞台のカギを握っていたと言えるだろう。

    舞台装置では、前作同様最終シーンで大きな蒸気機関車が登場。前回は62という数字がプレートに書かれていたが、今回は51。これは、C62、D51を想定したものだろう。鉄道ファンも泣いて喜ぶこだわり。次回は幻のC63をもじって63かな?

    安定した舞台で楽しめたのだが、ただ一つ気に入らなかったのが、舞台中盤で出演者全員によるダンスというかパーフォーマンスというか、そういう類のシーンがあったこと。個人的に、舞台内容に密接性のないそうしたシーンを挿入することは好ましいと思っていない。むしろ嫌いである。そのシーンがなければ満点の舞台と言えただろう。

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    2015/11/08 00:25

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