おせん 公演情報 サスペンデッズ「おせん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    意表をつく構成の妙
    時代劇かとばかり思いましたが、さにあらず。

    隠れたテーマがほの見えた気がします。

    大学時代、西鶴研究の第一人者のゼミでしたので、「樽屋おせん」は既読でした。
    詳細は覚えていないけれど、「好色5人女」中、一番気の毒に感じた覚えがあります。

    サスペンデッズの3人の役者さんで、どういう風に演じるのか興味がありましたが、そう来ましたか!

    時代劇に見えて、しっかり現代劇ではという印象ですが、とにかく、3人の演者としての進化も観られ、とてもエキサイテイングな舞台運びに、ワクワクしました。

    今後も、益々、この劇団、見逃せないなという思いがしました。

    ネタバレBOX

    この劇団には珍しく、開演前に、キャストの3人が、会場で、席の案内や飴を配っていました。お客さんとも、普通に、世間話などもしています。

    それが、幕が開いた瞬間、舞台に移動して、登場人物になりきります。

    その切り替えがお見事。

    どうやら、この三人は、人間ではなく、人形でした。

    人形遣いに繰られて演じる人形ですが、おせん役の人形が、稽古を抜け出し、逃走してしまって、残された、男の人形3体は、思案にあぐねているところ。とりあえず、3体だけで、稽古を続けようということに決まり、一人が、何役も兼ねて、「樽屋おせん」の芝居が進行して行きます。

    こういう、趣向のせいで、佐藤さんがおせんを演じることに何の違和感もないのです。どなたのアイデアかはわかりませんが、この趣向はお見事でした。

    いつもは、人形遣いの意のままに、役作りなどもいい加減に演じていた3体が、稽古を進める内に、役の想いが伝播して、だんだんに、演じることへの自主性が芽生えます。

    もしかすると、これは、この劇団の、演劇論の提示なのではないかと感じました。

    サスペンデッズの描いたおせんは、歌祭文のおせんでも、西鶴のおせんでも、青菓のおせんでもなく、現代のいおせんとしての決断をします。

    不義を悔やんで、自害するのではなく、男に振り回される人生はまっぴらだと、今の場所から逃走するのです。

    実に斬新極まりない、サスペンデッズおせんでした。

    早替りの3人の役者さんの熱演が、とても心地よく、こうして、心底演劇を愛してやまない方々の舞台は、私にとっては、何よりの清涼剤となりました。 

    佐野さんの瞬時の二役には、大笑い。ちゃんと、それでも、役になりきっていて、感嘆ものでした。ただ、欲を言えば、早替えの衣装の襟が、ドウランで、真っ白になっていたのは、少し興ざめではありました。

    この作品、歌舞伎で、中村屋兄弟と獅童さんで演じても、面白いかもしれません。

    0

    2015/11/02 19:44

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大