四谷怪談 公演情報 ジェイ.クリップ「四谷怪談」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    情念豊かに...
    東海道四谷怪談...お顔岩の顔が変わり果てというイメージが強いが、本公演は男女の悲恋を群像劇として描いたというもの。台詞は原作に沿った歌舞伎調が謳い文句である。
    さて、歌舞伎の見巧者ではなく、ましてや生半可な付け焼刃的な知識も持ち合わせていない。歌舞伎的云々の台詞回しについては割愛(というか書けない)する。
    全体的な印象は謳い文句のとおり男女の恋愛物語であるが、そこに描かれたものは、個人レベルの恋愛と封建時代(武家社会)における「家制度」のあり方という二面性があったと思う。
    人間(個人)の欲望のひとつかもしれない情念を「本能」、一方、現代的に言えば貞操の「倫理」という対立を封建(武家)社会という軸の中で描こうとしていたようだ。
    歌舞伎が容色本位の見世物から演技を観せる劇へ進歩したと考えた時、この芝居はその観(魅)せるを追求したようだ。

    ネタバレBOX

    始めは2話の関連性の触り、それから個別に展開し終盤に収斂。独立しつつも魅力的。男のエゴ、侍の意地、武家社会の理不尽、仇討ちの不合理・無情。時代に翻弄されるも、男・女の愛憎、妖しく儚く幽魂。 美しく官能的であるが、一方不安や疑念を巻き込んで展開する濃密で極悪なサスペンス。
     
    当日パンフによれば、これは忠臣蔵の裏物語だという。舞台登場人物も相関図があり、四谷家、伊藤家、売春宿の3つの括りで示される。主人公は民谷伊右衛門(鯨井康介サン)で、四谷家のお岩と夫婦。お岩の妹にお袖、その夫が佐藤興茂七、このお袖に横恋慕するのが直助である。この夫婦二組の愛憎を中心に描かれる。そこに忠臣蔵の浅野家家臣(民谷・佐藤両名)、吉良家家臣(伊藤家)が絡み、武家社会の理不尽な様相が見え隠れする。大きく二組の男女の物語がそれぞれ独立して描かれているようであるが、仇討ちという時代軸を通して繋がる。その紡がれ方が情感たっぷり。ラストの殺陣や印象付ける余韻は秀逸であった。
    この時代の倫理観、道徳観と現代は違うと思う。敢えてこの人物(主人公)像は、社会の秩序や規範に抵触するが、個人の行動(反倫理)を社会の矛盾に苦しむ姿として投影することによって魅力あるものにしていたと思う。葛藤が深刻に掘り下げるほど「運命」への抗いが観えて面白い。
    俳優座の舞台が、エレクトロニックな光(照明)と歌謡曲(音楽)に包まれ、物語としての江戸時代(過去)と歌謡曲(現代)、そしてエキセントリックな感じの照明(未来)の融合...少し暗い照明に現代の歌謡曲と一瞬ギャップを感じせるが実は微妙にマッチしこの公演のオリジナリティを感じせる。そこに大きな世界観を感じた。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2015/10/21 13:44

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