満足度★★★★
新宿梁山泊第56回公演『少女仮面』
新宿梁山泊第56回公演『少女仮面』
菅孝行『戦後演劇』によれば,戯曲の世界は文字文化で,それが,俳優の身体によって,劇場の舞台に成立することが重要であるとされていた。とりわけ,このことを徹底して表現したのは,唐十郎だ。とぎすまされた身体感覚があって,観客にも十分伝わるものがあるはずだという。そういう自覚のない演劇では,活字に代えて,意味作用の符号が舞台にあがっているだけになるのだと。
下北沢スズナリで,『少女仮面』を観た。過去二回唐十郎の作品は,いつも最悪の席だった。しかし,今回直前でだれかキャンセルしたらしく,ほとんど特等席だった。そのために,すべての出演者の表情が良く見えた。
松山愛佳という人は,松山英太郎が伯父さんとのこと。芸能人は,関係者がほとんど俳優・芸術家系の方が多いということなのかもしれない。舞台ではひときわ出番も多く輝いていた。ヒースクリフ!を連呼するのが印象的で,後半では,宝塚の男役的発声を見事に演じていたと思う。
春日野八千代を73歳で演じていた,李麗仙(イ・ヨソン)は,なんと唐十郎と結婚していた時期があり,大鶴義丹の母だ。今回の目玉は,彼女だ。