満足度★★★★★
「不孝者ラプソディー」
今日は、会社の帰りに江戸川橋の絵空箱に、ebisu堂さんが出演される舞台、第四回公演:楽娯シリーズ第一弾「不孝者ラプソディー」を観に行って参りました。
ebisu堂さんとは、7月の萌恵さんの和らいぶで、お会いして少しお話しをした時に、この舞台のチラシを頂いたのがご縁で、今夜足を運んだのですが、もう、80分笑いっぱなしの楽しい舞台でした。
物心ついた時から、テレビで落語を見たり聴いたり、大人になってからは、何度か寄席に聞き行ったり、歌丸×小朝の二人会を聞きに行ったりする落語好きにとっては、飛び出す絵本ならぬ、飛び出す落語のこの舞台はもう、楽しくて、面白くて、最高でした。
落語を聴いていると、頭の中に映像が浮かび、登場人物たちが頭の中で立体になって動いていて、自分が江戸の町に紛れ込んで追体験している心持ちになるのですが、この舞台はそれが本当に実体となって、ポンと落語の登場人物たちが、目の前に飛び出して来て、落語「不孝者」の世界を繰り広げる。
「不孝者」は、寄席でも滅多に聴けない珍しい落語なんだとか。
江戸の大店の放蕩息子が、店の売掛金を取りに行ったその足で、柳橋の馴染みの店に行って、放蕩三昧している息子に意見をしようと、お供の着物でお供に成り済まし驚かせた後、息子にお灸を据え意見のひとつもしてやらねばと柳橋の店に行くのだがそこには...。という落語。
初めて聴く落語なのに、聴いたことがあるような、懐かしいようなのは何故かと思えば、落語には実によく橋にも棒にもかからない、放蕩息子というのがよく出て来るからだろう。
案内役の今夢(いまむ)さんの落語が途中からすーっとお芝居になり、お芝居からすーっと落語になりの繰り返しで、飛び出す落語の世界が目の前に広がって行く。
それはもう、落語好きにはぜいたくな面白さだし、落語を知らない人も心底楽しめること請け合い。
噺家独特の手の動きの色っぽさと言うのがあるのだが、今夢さんの猪口を持って飲む時の手の仕草、動きは正にその噺家の色っぽさがあった。
高山五月さんの清蔵は、6月に観た日本のラジオの「カナリヤ」の時とは、全然違う飄々ぬーぼーとした印象。 ebisu堂さんの幇間恵比八とがまの油売りは、もう、本当にお見事。確か、寄席でも一度観たこともあり、子どもの頃から、耳に馴染んだあの流れるような口上で、わくわくした。
それにしても、舞台に現れないのに、全ての役者さんたちが、一丸となって描いた居ないのに居るような放蕩息子の若旦那の存在感が凄い。
笑っている内に、仕事の疲れも吹っ飛んだ、正に楽娯の舞台でした。
舞台は、13日(日)までやっています。落語と芝居の融合、飛び出す落語に是非お運びを。
文:麻美 雪