満足度★★★★
社会諷刺がピリッ!
観劇させて頂きました。観劇中全体を通してもっとも印象に残ったのは、役者さん方が余裕十分に演じられていたことでした。これだけ全ての役者さんに余裕が感じられる劇団も珍しいのでは!しかし、この作品の導入部での状況設定の説明のための芝居が多少長かったようにも思えます。最初淡々と進みいよいよ物語が展開し始める兆しが見え出しますが、トップギアに入って最高速度を目指す訳ではありません。最後まで2速、3速の微妙なアクセルワークで作品が構成されています。この作品をコメディーと銘打ったのはひょっとしたら間違いだったのでは・・・純粋にコメディーを期待して観劇に来られた方には期待するものと違ったのでは・・・自分にはむしろ社会諷刺ブラックユーモア作品に感じられました。実は自分はヘビースモーカーであり、メタボをタバコに置き換えて観ていると痛切に感じられてきました。何にも悪いことをした訳では無いのに自分がタバコを吸い始めた数十年前からは信じられない時代になってしまいました。しかし、もはやタバコを吸う者には何一つ発言権がありません。その上タバコ1箱1000円でも、との話が持ち上がる昨今です。この作品を観劇中に自分の心の中にどす黒いものが渦巻き「もっと言ってやってくれ!愛煙家はもう何一つ言えないから、せめて芝居の中でだけは・・・」との感情が支配しました。しかし、この作品は実によく理にかなった話の展開、生々しくも現実味のある算出数値設定ですから物語の結末も選択の余地の無い絶望的な未来を暗示しています。作品としてはそれがもっとも相応しいのですが、愛煙家の立場からは最後に一太刀痛快になる言葉が聞きたかったような気もします。