満足度★
取り扱う題材はおもしろかったが・・・
<1作目 天麩羅男と茶舞屋女>
時の内閣総理大臣、犬養毅を殺害した5.15事件の裏でもう一つの暗殺計画が企てられていた、それが喜劇俳優のチャールズ・チャップリン暗殺である。そして氷川丸に乗り込んでいたチャップリンとそこに暗殺の命を受けて女中として乗り込んでいた女マリを巡る物語。構想や取り扱う題材としては非常に興味深いものであった。しかしながら物語に入り込めない時間が続いた。
昭和史や歴史物など史実ネタ、というのは非常にドラマチックなりうるがとても扱いに難しいという印象がある。
それはその当時のイメージ、というものがよくありがちな戦争物などに固定され、演じる側や演出する側もそのありがちなイメージから抜けきれないからなのではないだろうか、といつも考える。
今回のもまさしくそれだった。役柄のありがちなイメージを演じる俳優、そしてそれを拭いきれない演出、というのが物語を少しつまらない物に見せていた感じがした。作家の川田唱子の作品は初見だったが、まだ若く、もちろんまだ多くの伸びシロがあるのだろうと思う。そのような意味では今後に期待したい。
<2作目 FRIENDSHIP>
当団体も私は初見だった。単純におもしろかった、というのが感想だが、一つどうしても引っかかってしまうのが、そもそもこれは氷川丸を題材とした作品を2つ、という企画であったはずなのに、この青春事情の作品は正直、氷川丸じゃなくても、クイーンエリザベスでも、それこそ飛行機でも宇宙船でもなんでも成り立つ作品だったのではないか、というところである。氷川丸じゃなくては成立しない作品、というものだったのであればもう少し違った感想が持てたのかもしれない。しかし、2つの作品を並べた時のバランス、という意味では好ましい流れだったのではないか、とも思える。