トロイラスとクレシダ 公演情報 世田谷パブリックシアター「トロイラスとクレシダ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    戦争の愚かしさ
    蜷川演出で以前観た作品ですが、鵜山さんの演出には、人間と、戦争の愚かしさと、それによって起こる悲劇が、より鮮明に描かれていたように思います。

    個性的な文学座の役者さんと、商業演劇畑の役者さんのコラボが、成功していました。

    小田島さんの訳は、歌舞伎の隠語のように、耳を欹てて、聞くと、かなり意味深な台詞が多く、卑猥な言葉が、うまく修飾されて、さすが、プロのお仕事だなと感心しました。

    戦争は、いつの世も、実に愚かしい理由から始まり、それに翻弄された人達は、勝っても負けても、多くの痛みと犠牲を伴うものだという事実が、いつになく、胸に迫る舞台でした。

    どんな戦争にも、正義などないし、結局は、意に沿わない相手を抹殺するために行われる殺人行為でしかないということを、わが国の愚かな為政者達に、思い知らせたくなります。

    ネタバレBOX

    昔、トロイの王妃へカベを演じたことがあるので、登場人物の名前には、一応聞き覚えがあるものの、やはり、人物関係がわかり辛いので、チラシに、相関図が載っていたのは、観客に親切で、ありがたく思いました。

    登場人物が、わざと、現代の服装なのは、この愚かな戦争が、現代にも通じるという暗喩でしょうか?そこまでしなくても、演出の意図は伝わるので、やはり衣装は、当時のままで良かったように、個人的には感じました。

    クレシダを寝取られて、怒りに震えるトロイラスとダイアミディーズの一騎打ち場面は、3階で観ていてもハラハラするほどの迫真シーンで、よくお怪我もなく、これだけリアルに演じられるものだと、浦井さんと岡本さんの役者力にただただ感服してしまいました。

    自分のせいで戦争が起こったのに、常に能天気な浅野さん演じるパリスと、その兄弟の横恋慕のせいで、悲劇的な最期を迎えるヘクターとトロイラスの、対比が、演劇として観ると、喜劇でもあり、また歴史として深く考えると、実に不条理な現実で、つくづく、戦争は、物語世界の中だけにしてほしいと、痛切に感じます。

    ヘクター役の吉田さんにも、舞台俳優としての、進化があり、嬉しく拝見しました。

    幕を使った簡易な装置が大変効果的で、スタッフ力も、相当レベルの高い舞台作品だったと思います。

    0

    2015/07/31 02:46

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大