イチエフ・プレイズ 公演情報 ワンツーワークス「イチエフ・プレイズ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    恐怖が始まる…観応えがあった
    本当に怖く、壊れていく様が観てとれる。この芝居が素晴らしいと思ったところは、当事者間の問題として描き、他者(他の地域等)と比較するような安易な観せ方にしないところ。
    リアリティある設定、本音のセリフ内容、その自然体の中から浮き彫りになる恐怖。その目に見えない”敵”は、現在だけでなく将来をも蝕む(汚染)。一方、今を生きる人々の日常生活は待ったなしに迫る。未来を考えて現在を犠牲にするのかという叫びも聞こえそう。

    原発...都市的な消費経済を優先する現代社会の落とし子。将来のリスクを地方都市に押し付けるという構図が観える。本公演は都邑対立ではなく、地元の人々の生活の中で問題提起するという、コンパクトにして壮大な人類の未来への考察した秀作だと思う。

    ネタバレBOX

    舞台セットは和室、上手にサイドボード等、下手は仏壇、そして中央に卓袱台が置いてあり、そこが芝居の主場所である。周りは回廊のようになっており、外への通路でもある。そして関心したのが、和室の四隅に羽目板が5cm前後の間隔で横打されている。それが鯨幕のように見えて、その家族で起こった状況が一目で理解出来たようだ。

    そして演技...プロローグを始め、いたる場面でストップモーション/モーショントレーサーのような動作は、独特で目を奪われるようであった。

    その家族、人物像が明確になるような丁寧な作り込みであった。
    登場人物の夫々の思いや状況がはっきりしている。

     夫は、仕事への執着心、誇りを持っている。地域や会社での評判を気にする。会社は裏切らないとの忠誠心のようなものも見える。しかし、親会社からの圧力もあり、下請け会社の立場では労災申請をしないでほしい。そこに働く人へのしわ寄せ。
     妻は、夫の健康には気遣う。しかし、会社での様子や仕事内容は知らない。実のところ危険認識については鈍い。家庭内平穏が第一優先。
     娘は、恋人の健康が気になる。結婚や将来妊娠した時の不安が払拭できない。父と娘の対立はどちらも本音の正論。
     彼氏は、仕事への誇り、危険であることを認識しつつも仲間を裏切れないジレンマ。
     記者は、基準内にも関らず発症するという、異常なことしか記事にしない。逆に言えば基準を超えて発症事例は当たり前で売れない。それこそ異常な報道姿勢であるのだが...。被ばく量の測定は、過重労働...過労死・労災認定と同じで、どの時点からとらえても年間(輪切)の計測値を捉えるという当たり前がない。
     義妹は、自分の賃貸家屋が汚染区域にあるため家賃収入が無くなった。経済的逼迫から原発反対運動へ...。

    夫々が抱えている問題は目先の現実、それが本音であり間違っているとも思えない。そういうあり得る設定から浮かび上がる日常の現実にどう対処するか?実に見えない敵は現在だけではなく未来にも悪影響を及ぼす。

    目先優先になりがち、しかし当事者にすれば当たり前であろう。その地から遠く離れた場所から理想・理屈を並べても説得力に乏しい。しかし、放置することができない問題でもある。そこは観客(自分)が考えるところ。内包する問題...その多くを提示しているが、焦点が暈けず核心(和菓子の餡の部分)を鮮鋭にした公演であった。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2015/07/26 23:53

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