満足度★★★
素朴に、ひたひたと。
神奈川で地道に活動し、時々耳にする劇団。脚本•椎名泉水という武器を持つ。数えてみるとstudio salt観劇は今回で3度目。多くを語らず、言い切らない脚本、という印象が共通である。ただし題材は多様で、標的の題材から物語を紡ぎ出す、独自の劇作法があるのかな・・と想像させる。
会場はJR桜木町駅から徒歩10分、神奈川の演劇の拠点の一つである青少年センター(急坂の紅葉坂を登った所)の多目的ホール。横に広くステージを取り、客席も横長に設置する事が多い。でもって、黒尽くめでなく「劇場」より「部屋」の雰囲気を残す、そういうよくあるスペースだが、今回、会場に入ってまず舞台の使い方のうまさに気づく。古い学校机が一面、ランダムに(多方向に)並び、その幾つかに照明が当たっている。奥の壁の左右の端に備え付けのドアがあり、その二つだけが人物の出はけの場所だ。
開幕、漆黒の暗転のなか音もせぬ迅速な板付き。おのおのの机に座る数名の男らの会話。抜き差しならぬ状況が語られ、噂の「抜き差しならぬ相手」がやがて登場する。夏制服を来た女子高生(とみえる)二人だ。あっけらかんとしたトーンとは裏腹の、冷酷。「状況」についての事細かな説明はしないが、時代が近未来であり、端からみれば異常な事態を、維持し使命を遂行しようとする二人の間の、あるいは自身の内面との葛藤、そして受動的にそこに置かれた男達の、外的状況を巡っての葛藤、両面が描き出されている。
BGM無し(あっても悪くないと思ったが、選曲には悩むかも)。淡々と時が経過する静寂の中から、ひたひたと、じわじわと何かが突き上がって来る「兆し」が、見えた。
芝居の「濃度」×時間の短さ、により星三つ。