かべぎわのカレンダリオ 公演情報 バンタムクラスステージ「かべぎわのカレンダリオ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    A公演~銃声の意味
    いやー、大変面白かった。
    ギャングの抗争、裏切りと復讐というよくある設定なのに、
    登場人物が魅力的で魅せる。
    主人公のカレンダー(福地教光)のクールなだけでない隠れた苦悩や、
    ピストーネ(上杉逸平)の含蓄ある台詞、
    ヒステリックに怒鳴り散らしながら必死で不安を押し殺そうとするヴァンチュラ(土屋兼久)、
    日和見主義のピアス(ガラかつとし)の世渡りぶりなど
    人物像の陰影がくっきりしていてストーリーに厚みがあるのが素晴らしい。
    私の大好きなバンタムの銃声に“意味”を持たせるのは、このキャラの奥行きに他ならない。
    完璧なタイミングで放つ銃声と死に方、薬莢の乾いた音にたまらなく震える。

    ネタバレBOX

    ローマを牛耳るボス、ピストーネ(上杉逸平)が、手下のピアス(ガラかつとし)に裏切られ
    撃たれて死ぬところから物語は始まる。
    後継者ヴァンチュラ(土屋兼久)は、ピストーネが守って来た街の映画館を潰そうと計画、
    赤字を立て直すと称して映画館に会計士を送り込むが、この会計士が、
    実は殺し屋のカレンダー(福地教光)だった。
    ラウラ(椎名亜音)とマレーネ(宮島小百合)が二人で切り回す小さな映画館は、
    会計士の指示で少しずつ売り上げを伸ばしていく。
    マレーネの暗殺を命じられたカレンダーの真意はどこにあるのか。
    やがてマレーネがピストーネの娘であることや、カレンダーの悲痛な過去が明かされる…。

    舞台上で殺し屋ほど魅力的な役はないと思う。
    究極の緊張を伴い、人としてある部分が欠落していなければできない職業だけに
    その抑制の効いた行動とコンプレックスのギャップがアンバランスで面白い。
    カレンダーもその一人で、自信たっぷりだったかと思うと弱々しい過去を晒したり
    会計士として誠実に腕を振るったかと思えば、女の殺し屋をあっさり葬る。
    福地さんはその振れ幅が大きくてきれいなのが最大の魅力だ。

    ピストーネの映画に関する深い台詞もいいし、
    裏切者ピアスの日和った生き方も味がある。
    神父で殺し屋という超アンビバレントな職業を自在に行き来する男も面白かった。
    演じる小川大悟さんの2丁拳銃がかっこよかったし、カレンダーを助ける男気がいい。
    サイショモンドダスト★さんの抑えた声と崩れない姿勢が、とても印象的だった。
    女優さんがみなクラシックな雰囲気を持っていて綺麗。

    スピーディーな場転と出ハケ、時間と場所を瞬時に切り替える照明も効果的で
    教会の場面や回想シーンなど映画のようにドラマチック。

    結局マレーネを守ろうとした男たちは、誰かに守られて生き延びる。
    それが最後に温かな手触りを残すので、途中結構凄惨な場面もあったはずなのに
    何となくめでたし感を以て終わる。
    細川氏の向日性が感じられてちょっと嬉しい。
    カレンダーがいつか客席に座る日を、私も密かに待っている。


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    2015/05/16 20:38

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