総員死ニ方用意 公演情報 タッタタ探検組合「総員死ニ方用意」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    花五つ星
    このタイトルの余りの的確さに惹かれた者も多かろう。特に多少とも軍や軍事、戦争について注意を向けてきた者達にとって、今、この「国」が置かれている状況を、これほど適確且つ大胆に表現することは極めて難しいからである。(ネタバレは更に後ほど追記2015.5.15追記)

    ネタバレBOX

     
     国会では本日午後、安保関連法案が閣議決定され、明日15日には、法案が衆議院に提出される。無論、安倍は丁寧に国民のコンセンサスを得るようなことはしない。それは、先ず、海外で肝心なことを外交的に詰め、コンセンサスを得て、事実上憲法判断のできない“最高裁判所”のある植民地「国」内に持ち帰って、実質憲法の上位にある地位協定を根拠に2+2で詰めてきたことを実現するだけだからである。様々な擬態や嘘、秘密協定と情報公開の不備、官僚達の勘違い(彼らの主人は日本国民であるはずが、実際は、大日本帝国憲法が定めた唯一の主権者であった天皇の代わりにアメリカが居座っただけである。)等々、この植民地の実情は、基本的に隠されている。それは、戦前も戦後も変わらない。その辺りのことは、開演前、舞台上の練習特務艦「喜島」の砲塔二門の間に吊り下げられた垂れ幕に書かれた岡倉 天心の以下の文句“我々は我々の歴史の中に我々の未来の秘密が横たわっていることを本能的に知る”で示唆されている。
     今作で谷村艦長以下の人々が乗り込む船喜島は、第一次世界大戦時に就航した船で、排水量9700t、全長134.72m、最大速21.5kt(時速約39.8km)、乗員726名で現在は練習特務艦として用いられている。尚、谷村と沖縄への海上特攻の任に当たる第二艦隊の旗艦大和の艦長有賀 幸作は、同期のライバルで親友、互いに日本一の軍艦の艦長にどちらが先になるか競争した仲の俊英二傑。片や大和の艦長有賀、片や大怪我の為、下船の憂き目を見た後も海と艦への愛着が経ち切れず特に願って練習艦艦長として帰任した谷村の因縁は、ミッドウェー海戦以来負けっぱなし。暗号は解読され、空母、艦載機、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦等々の殆どを失った日本は、起死回生の望みを絶望的な特攻作戦に賭けていた、態々、死にに行く親友を助けるべく、山中博士の発明した新兵器、神雷を装備した喜島で大和救援の為、秘密裏に船出した喜島だったが、軍上層部へは秘密の作戦だった為、大和の正確な位置、出発時刻などの暗号解読で、怪しまれた担当者が軍部から拘束を受け、救援の任に就いたのは大和出撃後15時間の後であった。未だ初日が終わったばかりで、本日2日目だから、ここ迄にしておく。見どころは満載。殊に戦争が始まるということで何が失われてゆくのか、という本質をぐっと掴んで取り出し、登場人物達のキャラクター設定に巧みにそれらを配し、観客に自然と本質が伝わるように書かれたシナリオ、悲痛極まりない現実をキチンと喜劇仕立てにしつつ、見事に本質を表出せしめた演出、各々の役者の演技が相俟って必見の舞台である。
     ところで、今作で喜島に乗り込んだのは実際には百五十数名に過ぎない。艦長、副艦長、神雷の発明者、山中博士そして志願看護婦5名を含めての数である。駆動・操船にさえ不安が募る通常の5分の1の人数だ。海上特攻する大和を救うべく出撃した喜島からは、出港前、鼠が大挙して繋船ロープを伝い逃げて行った。船乗りの常識として、この船は沈む、と言うことである。即ち全員、命は無い。而も、下級兵士たちの噂では、艦長に勝算ありとの判断があったのだと言う。(この矛盾をどう処理するかも注目)論より証拠、大和を追い出撃した喜島に敵機が襲いかかった。博士は、すぐ神雷を作動させ、襲来する敵機を見事木端微塵にした。博士は大空襲で妻子を失っている。彼にとってアメリカは、必滅の敵国である。だが、神雷が、活躍すればするほど、戦争は長引き、双方の損失は、益々増える。救援に向かった大和は、残念乍ら、谷村・有馬両俊英の予測通り、大日本帝国軍の援助の及ばなくなった海域に入った大和への敵機からの総攻撃で3332名の乗組員ともども海の藻屑と消えた。谷村は自問する。神雷を使い続けて、戦争を長引かせ、双方の犠牲を更に増やすのか? それとも喜島と共に引くべきかを。
     この難しい決断の結果は、作品を観るべし!! 何度でも観たい舞台である。観れば、引き込まれて損をした気になどなるまい。

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    2015/05/14 17:08

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