満足度★★★★
2バージョン、その心は。
観賞日を変えて動ver.→静ver.順で観た。<動>は前に見たうさぎストライプ風、<静>は青年団風。主人公(小瀧万梨子)を除く同窓生と店の客が、別キャストであるばかりでなく、台詞も少し異なり、話としても別バージョンになっている。<静>をスタンダードとして観るのが判りやすい気がした。現在(若く見積もって20代前半)と、小学校高学年(回顧)という二つの時の間に、中学高校とあったはずの濃厚な時代が省かれているので、リアルに想像すると難しい面も出てくるが、生きてく上で人が「過去」とどう付き合うかがテーマになっているのには違いない。<動>を先に観たので、話を追うのに力を使い、<静>は「答え合わせ」もしくは双方の違いを確認する作業になった。<静>では飽くまで、主人公が中心にあって、謎の女の存在が彼女にどう関係するのかを注視して行くが、<動>を先に観ると、「見せ方」に凝っている分、主人公と他の人物が並列に置かれているように見えてしまった。多分、意図は主人公の話、だったはず。それには戯曲上の(誤解を招く)書かれ方もあったと思う。
「謎」が序盤に出てきて「謎解き」を欲する緊張が最後まで芝居を引っ張るが、浮かんで来るのは小瀧演じる女性の「現在のありよう」、という事になる。いじめられていた過去があっても(言うたら小学校時代の事やろ、とは突っ込まない事にして)、今は充実した「普通の」生活を送っている風に見える。その彼女の内面に何があるのか・・特殊な何かではなく、私たちの中にもあるだろう心理規制を想起させる。「だから何だ」と一蹴しても良いが、何か大事なことがそこにあるんじゃないか(謎の女の口からその事がいかがわしい形で語られるが)と、立ち止まって考えさせるものがあった。俳優の存在感が大きい。
2ver合わせて星四つ。