満足度★★★★
不具合もありつつ‥緻密さを醸す演出
ブラジル戯曲だが三浦大輔氏が書きそうな戯曲でもあり、無理仕事の感は全く無し(同じく他者作品を演出した『ストリッパー物語』は観ていないのでそれとの比較にあらず)。ただ、性に対する禁忌の強いカトリック圏の文化に根ざして書かれた話は「キリスト教」に近い場所に居る自分にとっても理解しづらい部分があった。この部分が「不具合」にも関わる。
異文化への想像力を動員させられる作品ではあったが、美術に十字架を多用した演出はその意味で効果的におもわれた。装置もよく出来ており、乾燥した固い土か岩を削って作ったような(南米にありそうな)白茶けた造形物が小高い丘のように中央に立つ。下手には袖側へ湾曲した長い階段、中央からもう一つの階段が中段あたりのエリアに至り、そこから更に下手側に昇れば最上段のエリア(先の階段の上)がある。上手は建造物を支える数本の柱が見え、奥は暗い。両階段上の各エリアと舞台前面の広いエリアの三つが、シーンごとに道具を変えて場所を表現する。前面エリアでは、下手斜め奥から別荘の部屋が、(暗転中で判らないが多分)上手から小さな部屋のセットが運び込まれ、中段・上段の小エリアでは短い挿入エピソードに多用され、上中下と階段を組み合わせたバリエーションが多彩で、場面のリアルさにこだわる三浦氏ならではの凝った装置となっていた。
さて、俳優と演技については内容に触れるのでネタバレにて。