満足度★★★★★
自然体でおもしろがること
若い女優さんばかり6人が織りなすストーリーは、登場人物が創作する「おはなし」の世界で、共感したり感動したりということは出来難い、よくわからない不思議な世界。不思議な国のアリス的な。
ワタシは「よくわからない」ものを「ほらほら、わからないでしょ?」とやられるのが苦手なのだけど、この芝居は「よくわからない」のがとても楽しかった。で、何がよかったのかな、と考えてみた。
思うに「よくわからない」本を、役者さんが「おもしろがる」ことができるかどうか、そこがまず境目なのかな、と感じました。
この芝居では、女優さんたちが、本に描かれたおかしな世界をとても楽しんでる。おもしろがって「もっとおもしろくしちゃおう」「全力尽くしちゃおう」って舞台に立ってる。
そして、ここが重要だと思うのだけど、そのやる気、気合が、自然体なんです。だから、観ていて疲れないし、リラックスできるから惹き込まれる。「ひー、わかんない!」「わーどうして?」と楽しくなる。
ここがすごく難しいところだと思うのだけど、やる気が全面に出ちゃうと、観てる方は疲れちゃうんですよね。「さあ、もっとおもしろくしよう!」「全力尽くそうぜ!!」「エイエイオー!!!」だと、絶対おもしろいものできない、とワタシは思います。
その点、音楽も同じで、プレイヤーが「気合」「集中」「根性」を感じさせてしまったら、聴き手が楽しめる音楽にはならない。
この芝居の、このリラックスできる面白さが演出の力なんだとしたら、演出家・島村は凄いコンダクター、ってことなんだと思います。
その島村も、仕事とか生活とかのかなりの部分投げ捨てて芝居やっているらしいのだけど、悲壮感とか必死感が全然なくて、ほわーっとしている。これも凄い。「これに賭けてる」って感じが見えちゃだめなんだよ、そんな人生の苦悩や崖っぷち、付き合いたくないもの。
芝居だから直接眼に触れるのは6人の女優さんだけなのだけど、作演出の島村も音響さんも照明さんも美術さんも(あとどんな人が関わっているのかわからんけど)みんな面白い人たちなんだろうなー。というのが垣間見える。おもしろい人じゃないと、こんなもの作らないでしょうから。
6人の女優さん、みんな素晴らしかったけれど、特に久保佳絵さん(セリフのある舞台は初めてという)の表現力は特筆ものでした。
にびいろレシピ、次作がいつ出てくるかわかりませんが、気長に待ちたいと思います。