歌劇「Rapunzel-3058」 公演情報 国立オペラ・カンパニー 青いサカナ団「歌劇「Rapunzel-3058」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    好きな公演です
    本公演は新作書下ろし作品で、テーマ性に優れた内容であった。オフィシャルチラシには、SFオペラと印刷されており、当初から「すみだパークスタジオ倉」でのオペラ公演を案内している。もちろんこの劇場がオペラ劇場でないことを承知の上で公演している。当日配布パンフ中で、原作・脚本・作曲・演出担当の神田慶一 氏が「オペラ劇場を離れ、敢えて様々な挑戦の可能性を秘めた芝居小屋で上演するオペラとして様々な挑戦を行っている新作を創り出しました。オペラには不向きな環境かもしれませんが、今までにない形でのオペラ創作のアプローチとして、新たな刺激と魅力と、更にはこのジャンルの可能性を提供する...」と記している。この試みに敬意を表したい。

    もともと日本にはオペラ上演する劇場が少なく、あっても東京を始めとした大都市に集中している。地方でオペラを観たいと思っても、その機会が少ないであろう。そういう意味で普通の芝居小屋での挑戦...好きである。

    このオペラ劇場ではない小屋で、舞台上手にオーケストラピットを設置し、最低限の編成(14楽器?)で、音楽を奏でていた。本来のオーケストラピットがあれば指揮者は正面から芝居の進行状況に応じてタクトを振ることが出来るが、本公演では難しい。それゆえ指揮者から舞台が見えるよう斜めに指揮台を設置している。先に書いたが、敢えて...の苦心した点であろう。

    公演の内容は、現代社会に対する問題提起が鋭い。寓話を装いながら、その描く心底...実に感銘を受けた。
    純粋に公演内容だけみれば、いくつか気になる点はあるが、それ以上にテーマ性とそれを演出した力量は素晴らしい。

    ネタバレBOX

    本が開き、物語の世界から白雪姫、魔女、小人達が現れる、というファンタジー豊かなプロローグ。この物語は、本の世界から始まるが、物語に入り込むと「詩(ウタ)」がなくなり、「本」は不要な想像力を喚起するという理由で禁止されている。その世界は「ヴェルト」という支配階級が暮らしており、優等遺伝子交配によって生まれた子供たちを電脳学習させている。そして優秀ではない、とされる労働者階級はID端末を腕に装着され管理されている。

    外界は環境危険という名目で、安全なシェルター内で暮らすことを強要する支配層。一方、労働者階級は酒場に集まっては宴を...そんな中に白雪姫の物語を挿入してSF風に仕上げている。

    現代に繋がるかもしれない核汚染、優性交配(もしくは出産前検診)、無機質な学習形態、貧富の差、一見安全だ、という「ユートピア(理想郷)」を思わせるが、実は自由という人間にとって大事な権利を奪うという「ディストピア(非理想郷)」の物語になっている。この不合理な内容を教訓的な”くさい”芝居にせず、老若男女が楽しめるように創作したところが素晴らしい。

    演技については、メインキャストとそれ以外では技量に相当の差があり、キャスティングは一考が必要である(特に子供たち)。

    本格的なオペラ志向には物足りないだろうが、もともとそれを承知しての制作サイドであり、少なくとも自分は十分楽しんだ。そして、できればこの規模の劇場での試みを続け、オペラを観る機会が増えれば...そんな思いを持っている。

    最後に苦言になるが、会場ロビーが使用できないようになっている以上、出演者とその関係者(主には家族と思われる)が、出入り口に集まっていると、一般観客には迷惑になる。この点は配慮、改善が必要であろう。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2015/04/08 18:54

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