満足度★★★★
ザッツプロデュース公演
俳優らしい俳優を取り揃え、その競演ぶりを楽しんでもらうのが料金の内実である公演。俳優とて人間、演技がうまくても付き合いのそう無い人と技術のみでアンサンブル醸すのは中々困難だ。逆に技術がなくても集団としての緊密さが濃厚な舞台空間を作り上げる事もある。このどう足掻いてもインスタントさを免れないハンディを、埋めるだけの技量、存在感を持つ俳優ゆえに成立するのが、逆に言うとプロデュース公演。そういうものである事を感じる舞台だった。平均年齢は高い。演技は新劇に属する。作り込んで自然に見せる演技が、日本でないアメリカ、しかもちょっと古い時代のお話に、合っている。陪審員の密室協議の劇だから設定上は一期一会、従って俳優たちの実際の状況(一定期間おつきあいする事になった)に合致するが、その事が「活用」されていたりするかと言えば、ない、というのが新劇的演技のそれたる所以なのだな、とも感じる。定番のような演技で、舞台の世界を成立させ得ていた要素が、俳優のオーラ、存在感。もっとも技術を駆使するよりは、スタニスラフスキーシステムの薫陶を潜りきってる人達だから「リアル」である事が目指されている模様だ。実はこのリアルには予め限界設定がある、そういう新劇系の所作には先が見える感が漂うものだが、それでも見入ってしまうのはこの優れた戯曲の顛末をやはり追ってしまうからだろう。そういう客の心も踏まえた分りやすい演技、気味の良い演技が目指されていた、とも言えるかもしれない。台詞を食って「しまった」的な仕草がつい出たり、これは決めていたしぐさで自然の流れに任せたのではないな、とか、限界も見えたが、追わずにおれないのがこの「十二人の話」。そこは堪能したし、老練の域に達する俳優たち(ばかりでないが率が高い)が台詞も噛まずテンポも弛まず見せる熱演には、芝居そのものとは別の意味での感慨を起こさせる。これもまた演劇なるかな・・?