夏目漱石とねこ 公演情報 DULL-COLORED POP「夏目漱石とねこ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    何度でも
    オープニングの演出が素晴らしく綺麗。光と影のコントラスト。横に広い座・高円寺の舞台を左右に狭く、逆に奥行きをもたせて前後に深みをもたせる演出も良かった。谷賢一の描く世界の格好良さには最近やられっぱなし。1回だけでも楽しめるけど、一度では受け止められないほどに、そこに込められている想いの多さを感じる。夏目漱石に関する周辺情報もある程度入っているとより楽しめる作品。

    ネタバレBOX

    大きな波を意図的に作っていないにもかかわらず、時間の流れがあっという間。気付くとラストまで一気に持っていく運び方がとても上手かった。誰かが突出する訳でもなく一個の作品としての完成度の高さが素晴らしい。

    個人的に心掴まれたのは、正岡子規のシーンと、きんのすけのシーン。

    正岡子規の空中散歩のあとのラスト「きちんと子供をやらなかったから、お前は今でも子供なんだよ」で刺さった。泣いた。谷賢一に自分の中にある漱石と同じ部分を抉られた感覚だった。

    あとは、きんのすけのラスト、漱石と金之助のやりとり。きんのすけ(百花亜希)の涙。心を揺さぶられた。孤独ではなくただ寂しい。その寂寞感で涙が出てきた。百花亜希にはとにかく心を揺さぶられる。しかも、その流れの中で最後に漱石が鏡子に対して「今夜の月は、いつもより綺麗だよ」と来るから涙が止まらなくなった。苦しくてどうにかなるかと思った。

    今作は流石のDULL-COLORED POP本公演という部分も満載だった。若林えりが担うオープニングアクトでスムーズに物語を運んでいき要所要所で物語を締める。中村梨那が今迄に観せてきた天真爛漫な姿と全く違う艶っぽい姿で観客を魅了する。堀奈津美が今作おそらく最も難しい20代の鏡子を好演して木下祐子に繋いでいく。塚越健一が抜群の存在感で漱石の人物像をあぶり出していく。百花亜希が劇場内を寂寞感で包み込む。東谷英人がラストのトリックをサラッと観せて綺麗にラストに繋げていく。それぞれに見せ場ばありつつ、全体の調和は崩さないバランス感が流石だった。

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    2015/03/30 01:31

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