誰も見たことのない場所2015 公演情報 ワンツーワークス「誰も見たことのない場所2015」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    秀作と認めぬ訳には。高自殺率のこの国で・・
    1-2ワークス観劇は、同じドキュメンタリー・シアター『息をひそめて』以来2度目と思っていたら、どこかで聞いたな「ドキュメンタリー・・」と思い出したのが数年前に観た『トーク・トゥ・テロリスト』、見返せば演出=古城十忍と。1-2ワークス「絡み」の観劇はドキュメントばかり3作目になるわけであった。
    最初に不評をこぼせば、『トークトゥ‥』を観た時(翻訳テキストという事もあってか)話を追えなかったと共に、占部房子のあまりに激しい演技の方向性(=役との同一化)に無理を感じた。シリア内戦がタイムリーに苛烈だった『息をひそめて』にも感じた「違和感」を考え合わせると、演じる主体、作る主体の<当事者性>の問題に突き当たる。難題ではあるが、爆撃や逃避行の<大変さ>は幾ら追求しても追いつかない限界がある。その「追いつかなさ」を語る事でしか、<大変さ>は立ち上がらせる事は出来ないのではないか‥。ある事実と我々(の日常)との関係、距離感の告白こそが社会的トピックに飛びついては離れる浮薄さに気づかせるものではないか・・そんな事を考えめぐらしたものだった。
    が、今作は私達がその渦中にある事象をめぐる、インタビュー集である。誠によく書けている、と言いそうになるが「よく集めた」が正しい訳である。もっとも、取材と作品の関係は多様でフィクションかドキュメントかという二分法など意味がない。逆にドキュメントと銘打つ「意図」を探る目で舞台と向き合うよう促される。
    今回は過去の「ドキュメント」とは打って変わって「近い」。役者の立つ位置が近いのか、語る中身が近いのか・・よく見えて判りやすい。素直でオーソドックスでストレートな演技をもって、客席側のインタビュアーとのダイアローグが繰り広げられるのが印象深い。隙をさらすような演技だが、多量、かつ重さのある情報がその媒体を通じて、水を飲むが如く入って来る。子を慈しむ親に似たり、自らは損をかぶる(?)芝居。観た者は次の日、まるで端から知っていた事のように知識を身につけていて、舞台の事は忘れている・・きっと茶飯事なのだ。
    自殺を「個人」でなく社会的要因において理解する問題群と取材対象がきっちりと網羅されたテキスト。リストカッター、アルコール依存症者グループ、鬱の彼女を持つ青年、といった人物が「自身をコントロールする困難」を体現し、まさに「個人」(自分自身)に帰せられない「何か他の要因」が背面にしっかり象られていく。
    2015年版ならではの話題として、過払い金云々のCMや学生奨学金、また現在は多重債務等の経済的要因による自殺が減ってきている事など、アップデイトされた情報が盛られていたことも、再演ながら<現在劇>の成立した理由だと思う。

    ネタバレBOX

    ネタバレではないが・・2000年前後みた国際機関による各国自殺率統計(確か90年代)では、冷戦終結後の市場経済導入によると思われる高自殺率を示したロシア・東欧諸国(元東側陣営)に次いで日本が10位に位置していた。以後の統計を知りたいが・・

    0

    2015/03/20 08:47

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大