誰も見たことのない場所2015 公演情報 ワンツーワークス「誰も見たことのない場所2015」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    自殺に迫るドキュメンタリー演劇。取材対象の多様さゆえに飽きさせない。/約125分
     厖大な取材によって自殺に迫ったドキュメンタリー演劇。
    ある役者による冒頭挨拶を除けば、劇は全て被取材者の言葉で構成され、役者たちが被取材者に扮して彼らの言葉を語ってゆくスタイル。

    結論から言うと、とても面白かった。

    何しろ取材対象が多岐にわたるので、色んな見地から自殺が語られて飽きさせない。

    自殺がテーマだし、終始どんよりしたトーンで進むのかと思いきや、そうでもなく、自殺に走りがちなアルコール依存症者や多重債務者の自助グループは自分たちの悲惨体験をユーモア混じりに明るく語り、富士の樹海で自殺志願者への説得を長年続ける警察官の語り口はすこぶるパワフル。

    その一方で、近親者の自殺や自身の自殺未遂を重く沈んだ口調で語る者も。

    そうした、明るかったり暗かったり、自殺者に同情的だったり否定的だったり、多種多様な証言がいい按配で配列・構成されていて、面白く為になる二時間でした。

    ネタバレBOX

    ある女による、両親の不和と進路に悩んで自殺した兄の話で終幕となる構成が良かった。
    ベテラン女優が演じる妹の語りは、「事件」から時を経ているせいなのか、悲しみよりも死んだ兄への愛情にあふれ、否応なしに胸を衝いてくる。

    「お兄ちゃんは死んじゃったけど、でもいいの。(私の心には生きているし、)兄にはいつでも会えるから」

    大筋こんな言葉で妹の語りは締めくくられる。

    これが劇作家の創作による言葉なら「なんてクサいセリフ…」と鼻白むところだが、被取材者から引き出された生の言葉だと思うと心がわななく。

    その一方で、両親の前で“公開自殺”を試みた元未遂者の語りには人生の可笑しみが満ち満ちていて、大いに笑わせていただきました。

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    2015/03/13 23:56

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