満足度★★★★
そこは新宿シアターサンモール
客席のゆるやかな傾斜が本多やPARCOの感じに似て、そのひと回り小さめのシアターサンモール(客席300程度)は新宿中心街から少し離れた、ビル地下なのにプチ・ゴージャスな劇場らしい劇場だ。通路に並ぶ客演・渡辺徹あての祝い花の豪華さ、送り名の豪華さはさすがというか。以前チラ見した時の劇団の「風貌」とはえらいギャップだが、この華やいだ祝祭の空気は狙って出せるものでない。
開演前のステージではギター、ウッドベー、ドラム+1で外タレのロック曲を演奏、と思いきや、エアである。芝居にバンドは出てこないが、芝居中この光景が既視感のように重なる部分がある。パフォーマンスもそこから発想されたのかも知れない。ただドラムがひっしと叩く8ビートのスネアがなぜか<裏>でなく<表>に入り、音楽をやる人間なら普通これはギャグに属するが、そう意図してるふうでもない。ギャグとマジ(自然)の境界のぼやけ具合が以前「チラ見」した同劇団の舞台にあったのをかすかに思い出した。そう私は未知の劇団の「正体」を発見しにやって来たのだった。
普段「役者」より「芝居」を見ようとする客だが、冒頭板付きで登場する渡辺徹の役割をどうしても追ってしまった。客演のスタンス、渡辺氏の出自であるリアル(新劇系)演技は運命に翻弄される主役の役柄に最終的にはフィットし、(笑いに絡む場面もあるにはあるが)貫徹して良かった、とは思いつつ、役の心情をもっと劇的に熱演で表現する位があっても良かった気がした。
もっとも、ドラマのほうはラストが決まれば「全て良し」なうまい作りがされている。復讐の物語の敵対する存在が対峙してのやりとりの終わり、一方が投げた問いに他方が逡巡したのち返した一言、その答えを聞いた相手のリアクションの、陰影を切り取るように照明がアウトし、フィナーレ・・。
このラストが残すものは多様でメッセージ性もあり深いテーマを含んでいる。が、そこまでの深みを受け止めた観客がどれだけ居たかどうかは未知数だ。というのは、憾みとして、シリアスに見るべき部分とギャグと荒唐無稽な設定の関係の整理を、観客に強いる面が残っているように感じたからだ。