満足度★★★★
サロン・ド・風琴
劇団名で観劇を決めるときは役者陣をチェックしてない事が多く、今回はフタを開ければ実力派俳優が揃っていた。甲高い声が響くと思えば文学座の粟野史浩、また金成均、森下亮(クロムモリブ)、岡本篤(劇チョコ)、他にも見た顔、そして見ぬ顔が並んでいるが、総じて、身体能力を評価されて参集したと思しく誇らかに上気する熱度が伝わってくる。リンクに見立てた装置が役者のエネルギーに蹴散らされぬよう耐えているかのような錯覚をおぼえた。
舞台は地方のアイスホッケーの公認プロチーム。実話である原作を元に書かれたようだが、女性の手による「男だけ」の芝居が、えらくよく書けている(詩森ろば作品は「Hedge」と今回の2本しか知らない)。元の話を尊重したリアリズムな芝居だが、スポ魂物のエンタメ性も追求され、焦点は彼らの高邁な精神性にあるが、出来過ぎの感あるストイックな格好よさにほだされてしまう、そういう類の演劇は思えば希有で新しいジャンルかも知れない(映画や劇画には多々あるに違いないが)。人情劇の成立する(観客の涙を誘う)セオリーがある如く、スポ魂劇の「ぐっと来る」ツボというのもあり、じんと来るけど人情劇とは違うタイプの「じんと来る感動」の形があった。
演技エリアとなるアイスホッケーリンクを挟んで両側に客席があり、ちょうど観戦エリアの具合。いつもは急勾配を感じさせるスズナリが、平坦にみえたのが新鮮だった。