満足度★★★★
自己増殖型ホラーと背後の現実
ホラーとして、これは怖い。何せ対象の得体が知れないものだから、観客自らの想像力で恐怖がどんどん自己増殖していく。その得体の知れないものに、この現実の「得体の知れない何か」を写像する物語構造もみごと。ただの夢物語ではない、ある種の現実味を演劇世界に与えていて。ただ、破綻へ向かって突き進むストーリーの最終点が、あまりにイノセントで優しすぎではないかと。そして、その先で物語が現実に回収される様子があまりにあっけなさすぎではないかと。せっかく、気持ち悪さと恐怖に満ちた、現実か非現実か分からない世界を創ったのだから、その先で、観客が自分で育てた恐怖を抱え込める破綻を観てみたかったなぁ、と。