満足度★★★★
『アイ』の物語
冒頭と再後の名乗りで、安藤重衛門が歌川広重のなるまでの物語を
彼の家族や師、北斎などの人物によって再構築されてゆきました。
白木を組み合わせた舞台美術が美しく、面白く利用されていました。
台詞、照明、音楽のズレが、稽古・準備の時間の不足を感じさせて
少々残念でした。
ラストのダンスシーンは、「絵を描く」=「踊る」=「筆は踊る」
この言葉をギュッと詰め込んだような時間だったと思います。
己を表現する、と云う欲求のようなもの、気迫、それが上手く登場人物と
演者にリンクした濃密な時間だったと思いました。
脚本的にはもっと両親の死と云う「哀」の部分をもっと深く描いた方が
家族や師との「愛」の部分とのバランスがとれて、「藍」を巡る物語に
深みが出たのではないかと思いました。
ただ、お正月のおめでたい独特の中で観るのには、あたたかな「愛」の
物語の方が似合うのかな、とも思えました。
今後のミヤタユーヤさんの創られる表現世界も楽しみにしております。