満足度★★★
大人の嘘
役者を際立たせるシンプルで印象的な演出の中に強いメッセージが込められていて、社会との関わり方について考えさせられる作品でした。
フィクションの原発事故を描いた『みえない雲』の作者、グードルン・パウゼヴァングさんを訪ねる「私」のドキュメンタリーの物語の枠組みの中で『みえない雲』の物語が展開する構成となっていて、原発の恐ろしさや、利己的な理由あるいは相手を思って嘘をつく大人の姿が悲痛な調子の中に描かれていました。
シリアスなテーマを扱った作品ですが、役者が複数役を演じたり、仕掛けが施された舞台美術や小道具を用いた演出があって、演劇的面白さが感じられました。しかし、序盤で主人公と行動を共にする人物が人形で演じられて稚気を強調した演出だったのは違和感を覚え、途中までは物語の世界に入り込み難かったです。
床が石のタイル状に仕上げられている以外は素舞台で、椅子やテーブル等の必要最低限の家具だけを運び込ぶスタイルでしたが、照明によるエリア分けによって様々な場面がスムーズに進行していました。少々照明の演出が目立ち過ぎる時があったのが残念に思いました。