満足度★★★★★
美しい照明に浮かび上がる怒り
原発事故の責任と、健忘症で一過性の国民、そして何より、
起こったことをどんどん忘れていく自分自身にも、
これでよいのかと厳しく問いかける作品。
作者の分身である女性を狂言回しに、ドイツで書かれた
架空の原発事故の物語を再現し現代日本とリンクさせる脚本がうまい。
息をのむほど美しい照明が素晴らしく、時空を自由に行き来する構成が映える。
人形を使った演出は、そのサイズ感と複数人数による台詞により効果絶大。
終盤ストレートすぎるかと思うほどに作者の怒りが前面に出るが
これを言わずにいられない強烈で真摯な思いが、愚直なだけにじかに伝わってくる。
ドイツ人の少女を演じた上白石萌音さん、過酷な現実を受入れ
もがきながら成長していく姿が初々しく力強い。
彼女に厳しく接しながらも、結局は一番応援している叔母を演じた大原研二さん、
意外なキャスティングだが、キャラが立って細やか、最後の泣かせ方は一級品。