満足度★★★
狂犬騒ぎへの意味づけはほどほどで良かったのでは?/180分弱(休憩込み)
狂犬ひしめく東京某区の人間模様を描き出した、四話から成る連作短編集。
“狂犬の氾濫”は密室状況を生み出すための方便と割り切り、その上で作劇したほうが良かったんじゃないだろうか?
これが、観終えての率直な感想。
事実、そう割り切り、狂犬騒ぎに捉われすぎずに某オフィスの出来事を描いてみせた第二話が一番楽しめた。
犬がひしめく外には出られず、会社に連泊中の社員たちは始終顔を突き合わせるうち互いを知りすぎてしまい、そこには自然とひと悶着が起きる。
狂犬騒動との繋がりは薄いものの、これは狂犬騒ぎ無しには生まれえなかったドラマであり、狂犬たちが間接的に引き起こしたドタバタ劇は私のみならず多くの観客の顔をほころばせていた。
ただ、劇全体としては狂犬騒ぎにこだわり過ぎの感。
狂犬の異常発生を意味づけようとしたところで、それは架空の出来事なので説明は無理筋になるし、それが人にもたらす災厄を意味づけようとしたところで、話は説教臭くなるばかりで、観る者を鼻白ませる。
狂犬の氾濫は密室状況を生み出すための少々不条理な設定と割り切り、その意味づけは程々にとどめたほうが良かったのではないだろうか?