たとえばあしたのこと、とか。 公演情報 ともサンカク「たとえばあしたのこと、とか。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    小林知未という役者の魅力が全開!
    小林知未さんの演技者としての技量を思い知らされた一人芝居公演。
    高校時代(あるいはその前?)から演劇をやってきたという小林さんがこれまでに培ってきた様々な演技体が惜しみなく繰り出される上、演技体にかかわらずその演技は抑揚に富み、観る者を否応なしに引きつける。

    もちろん、作・演出家として、小林さんの持つ様々な演技の形が引き出されるようお膳立てをしてのけた渡辺裕之さんの功績も同じく讃えられるべき。

    その渡辺さんが役者となって小林さん作・演出による15分の短編一人芝居に挑んだ前座公演『高円寺あたりのエスニックなお店で売っている用途不明の謎の布』も見モノ。
    着想が良い上にユーモアに富み、楽しめた。
    何よりタイトルが可笑しい。

    ネタバレBOX

    本編は、放送室をジャックして“本音放送”を始める女子高生、夫との不仲に悩む人妻など多彩な役を小林さんが演じてのけ、さながら短編集のような趣。色んな小林さんが味わえてとても見応えがある。

    ただ、私には、小林さんの演じる複数の役が同じ一人の女性の過去・現在・未来の姿なのか、それとも複数の異なる女性なのか判然とせず、そこがハッキリするよう、脚本・演出にもっと工夫があればと思った。
    おそらく前者なのだろうが、各役にあまり連続性が感じられず、私には同じ一人の女性だとは直感的には思えなかった。
    これはおそらく、作劇レベルで細かい配慮を欠いているせい。
    例えば、夫との不仲に悩む未来の私のエピソード。今の私が妊娠中なら、未来の私のエピソードでも子供のことには触れるべき。そうすれば身ごもっている今の私と、夫と揉めている未来の私が同一人物だと客に伝わる。
    妊娠中の今の私が出産後に付けるつもりの子供の名前をお腹に向かって囁きかけ、未来の私がその同じ名を子供に向かって呼びかけたりすれば、両者の連続性はよりハッキリしたに違いない。
    さらに言えば、各役の間にキャラクターの連続性もつけて欲しかったところ。

    また、個々の話は面白いのに、全体として主張したいこと、すなわちテーマがいまひとつ明確でないのも気になった。
    「人生は素晴らしい」「人はいつでも自分を変えられる」「命は尊い」「記憶って不思議」etc...。
    私は本編からそんなようなことを汲み取ったが、そのいずれもがぼんやりとしか伝わってこず、ちょっともどかしかった。

    これは事によると、互いに結びつきが強いとは言いがたい複数のエピソードに無理やり一貫性を与えようとした結果なのかも。強引にテーマを持たせようとしたがゆえに、テーマが形を成さなかったのかもしれない。

    今作について言えば、潔く「短編集」と銘打ち、それぞれの話にそれぞれ個別のテーマを持たせたほうが良かった気もする。


    それから、ともサンカクが今後も公演を打っていくのであれば、小林さんの演技の幅をさらに広げるためにも、渡辺さん以外の作・演出家と組むコーナーを設けても良いような…。
    あと、「一人芝居」を標榜しているからといって、最初から最後まで一人で通す必要はないのでは?
    ゲストを迎えて二人ないし数人でやる演目があっても私は別に構わないと思うし、そういう演目があったほうが良きアクセントになって、全体のバランスも良くなると思う。

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    2014/11/17 15:23

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