満足度★★★
匿名の英雄
〈原風景〉の演劇化を目指していたのだと思う。過剰な「名付け」にこだわっていた私たちは実は「名付け」によって失われたものにこそ目を凝らすべきなのかもしれない。名付けから滑り落ちることの中に真実がある。名付けや人称にこだわることは滑稽なのだ。無名の中にこそ真実は立ち現れる。だが私たちはそのかすかに見えてきたものにもすぐ「名」を付けたがるのだが(笑)。近代を超える時代劇なのだと思う。スゴイ脚本だ。
だが、この公演が成功したかは疑問だ。時代に抗して観客を巻込むほどのエネルギーが感じられなかった。この40年の日本の歩みはまさに逆向きだったのだから。吹雪をものともせぬ凄まじいばかりの団結力(?)が必要だった。