満足度★★★★★
ディテールへのこだわりが懐かしさを倍増させる楽しい楽しい昭和歌謡バックステージ演劇!/約120分
昭和歌謡のバックダンサーグループ、メイツガールズの悲喜こもごもを描いたミュージカル。
リアリティを大きく欠くお話ではあったが、ミュージカルには観る者の現実感覚を麻痺させるところがあって、かなり無理のあるストーリー展開もさほど気にはならず、何があっても前向きに頑張るメイツガールズたちの物語を無心に堪能!
感心したのは、メイツガールズの振付けをはじめとするディテールへのこだわり。
メイツガールズは本家にあたるあのグループの定番アクションを見事に再現しているわ、歌番組のシーンはアノ人がモデルらしきタメ口司会者による各歌手の近況報告を交えた曲紹介がいかにもそれらしいわ、メイツが参加する番組のタイトルが架空のものとは思えないほど“昭和バラエティー”っぽいわで、“らしさ”と“ぽさ”の攻勢に懐かしさが突き上げてきて、古き良きあの時代を甘やかな気持ちで思い出しつつ頬を緩めながら楽しんだ。
番組司会者だけでなく、登場する歌手たちも“本家・メイツ”の最盛期にあたる昭和50年代に旬だった実在の芸能人がモデルになっているので、モデル当てをしながら鑑賞するのも一興か!?
つっても、誰が原型かは一人を除いてバレバレなんだが(笑)。
ついでながら、彼らが劇中で歌う歌は事前に告知されていた通り全てがオリジナルソングなのに、本家の歌手がいかにも歌いそうな歌ばかりで、その“らしさ”にも驚嘆!
あえて苦言を呈するならば、まず、歌番組のシーンを含め全体に照明が暗め。
歌番組のシーンは、照明をもっともっと強く焚いて舞台上を強烈な光で満たしたほうが昭和というきらびやかな時代の公開バラエティー感が増してより良かったのではないか? 実際にどうだったかはともかく、あの頃の歌番組はやたら照明が明るかった印象がある。
そして、舞台の低さにも違和感。もっと高くしたほうが、舞台が高めな公民館系のホールを会場とすることの多かった昭和の公開バラエティーらしさがより強く出て良かったと思う。
あと、これは前々作『Dear friends』にも感じたことだが、全体に“畳み掛け”が弱く、エンタメ色濃厚な劇なのに“収拾がつかないほど盛り上がる”シーンが無い。
これはちょっと残念だった。
なお、私の観た回はアフターイベントとして出演者によるのど自慢大会もあり、私の好きな椎名亜音さんが優勝。
歌唱力もモノマネ技術もぬきんでていて、この結果には多くのお客さんがご納得されたことと思う。