満足度★★★
どんどんタイトルから遠ざかっていくのが残念/約80分
数々の断片から成る、エチュード集のような作品。
事実、アフタートークによれば、イトウワカナさんが脚本を書いたのは冒頭ほかいくつかのシーンのみで、多くのシーンは役者とアイデアを出し合ってエチュード形式で作ったそうな。
何より魅了されたのはオープニング。
イトウさんが書いたという冒頭のシークエンスは『薄暮』というタイトルとの結びつきが強く、刹那で終わる薄暮という時間、そしてそこから派生する光と闇のイメージを小道具と身体表現を上手く使った凝った演出で表していて面白く、また、役者がそらんじるポエティックな文句も切なさと美しさに満ち、心つかまれた。
ところが時を追うごとにタイトルとの繋がりは薄れていき、それにつれてグダグダ感、ダラダラ感が増していって作品はトーンダウン。
ユーモアこそあるものの笑い崩れるほどのものでもなく、やがて私の心は舞台から遠ざかっていった。
やはり作品を引き締めるには、タイトルに示されたテーマでもって全体にきつい縛りをかけることが必須なのではないだろうか?
興味が続かなかったもう一つの理由は、表現されていることの一つ一つにあまり切実味が窺えなかったこと。
“これを吐き出さなきゃ私死んじゃう!!”
作者にはそれくらいの抜き差しならなさを持って創作に臨んで欲しかった。
そう言えば、イトウさんが書いたという冒頭部は他のシーンに比べるとまだしも切実味が感じられたような。。。
作風は嫌いじゃないので、次作に期待します。