愛フォンブース 公演情報 劇団フルタ丸「愛フォンブース」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    バッチグー
     着眼点の面白さに十人十色の性格描写を溶け込ませた作りは見事。(追記2014.11.12)

    ネタバレBOX

     欠けた林檎マークの新発売製品は、唯でさえ秘密主義のこの会社 にあってさえ、今迄無かったほどの秘密主義は、マニアを更に熱狂の渦に巻き込んだ。新製品をゲットする為に集まった10人。愛フォンブースという名称とサイズのみが明示されたが、スペックや値段、特性など、顧客が通常購入の際に必要とする情報は、伏せられたままである。而もこのメーカー、情報を秘匿すること、センスの良さ及び発想の奇抜で、ユーザーの疑心暗鬼を煽り巧みに誘導して、購買衝動をエスカレートさせる。その上で、飢餓感や品薄感を用いて虜にするという高等テクニックに長けている。集まった人間の殆どが、それらを重々承知の上で集まっているのだが、その他の人々も排除しないのが、今作にことよせて上手さを見せるフルタ丸の力である。具体例を挙げよう。10人の内、1人だけ、マニアで無いどころか携帯さえ持っていない主婦が紛れ込んでいるのである。
     彼女は、何故、此処にやってきたのか? ちょっと前まで、ママ友も、互いに回覧や固定電話によって連絡を取り合っていたのだが、携帯・Iフォンの普及によって皆ラインで繋がるようになり、これらの機器を持たないこの母子は、仲間はずれにされ馬鹿にされてしまった。それを見返す為に、此処に並んでいるのである。この辺り、こういうキャラを持ち込むシナリオの上手さ、現代文明批評の鋭さは、流石にフルタ丸である。
     ところで、1番は中村という名の男。2番はジュエルというハンドルネームのこの業界では名の売れた男。矢鱈、知ったかぶり&仕切りたがり屋でプレシオジテ臭フンプンの都会人を装った田舎者である。おまけに、新製品だから過去製品から類推することも難しい。発売される個数も不明な為、並んだ順番が重要になる可能性もある。そんな訳で、順番を買う者迄現れた。然し、必ずしも順番が総てに優先するという保証もない。
     こんな何もかも分からない状況で、煽られるだけ期待は煽られた。その結果現れるのは、其々の人間が持っているエゴである。このエゴのぶつかり合いこそ、今作の描こうとするものであることは言う迄もない。
     ところで、最後に落ちがある。順番を買ったり、大事な所で、ちょっと言葉を挟んで直前に発した言葉に何食わぬ顔をして責任を取らせてきた男は、スタッフであった。一種のスパイである。こんなことまでシナリオに織り込む所が、この劇団の作家の鋭い所である。綿密な計算を意識させない出来なのだ。本物である。

    0

    2014/11/01 03:37

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大