純真無垢のメカニズム 公演情報 たすいち「純真無垢のメカニズム」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    ハッタリと、笑いの技術
    今は消えてしまったけど、昔、早稲田の文学部の受験科目には、小論文があった。慶応の小論文が、「要約」という、「精緻な読み」を機械的に求めるのに対して、早稲田の小論文は、問題文が一行くらい。「この文章をもとに、考えたことを書きなさい」とかいう、すごくアバウトな、人間味あふれる、いいかげんなもの。歴史ある形式だったが、採点が不可能な感じで、数字が求められる時代の中に、あだ花と消えた。

    当時、予備校は、「早稲田の小論文は、バカにならないと書けない。ハッタリをどれだけかませらるかが勝負」と教えていた。

    たすいちのチラシには、「舞台という虚構の中で、屁理屈で理屈を通す、大人も子供も楽しめるファンタジー」とあるけど、感想としては、理屈はどこにもなかった。屁理屈が、屁理屈のまま、説得力なく、しぼんでいった。

    それは、でも、とてもすがすがしくて、僕は、楽しんだ。ハッタリが効いていて、しぼむとこまで含めて、ああ、早稲田だなぁ、と思った。

    ネタバレBOX

    本当にテンポよく、ぽんぽんと弾む会話で物語が進む。そのスピードたるや、本当に速い。速すぎて、笑うタイミングがつかめないほどだ。ためが欲しい、と思った。

    たとえば、何度かくり返される、高校生の告白シーン。「スキです」「ごめんなさい」「一瞬の迷いもないね」「迷った方がよかった?」と続く。どうやら、「一瞬の迷いもないね」が、たぶん「ここで笑うとこですよ」という、ひかえめな合図。自然にパッと笑うような、瞬発力あるものではない。でも、そうか、笑うとこか、なるほど、笑うか、と思い終わる間もなく、「迷った方がよかった?」とくる。その先は忘れたが、こういう、笑うスキのないテンポが続く。次第にこちらは、「じゃあ、笑わなくていいや」となった。

    一人だけ、一生懸命に笑う女の子(僕のとなりのとなりに座っていた)がいて、「ふふふふ」(ぴた)「ふふふふ」(ぴた)と、小刻みに笑い分ける。すごいな、と、感心した。ピンポイントで笑う技術が、求められる世界だった。

    0

    2008/08/21 17:53

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大