満足度★★★★★
大人の恋愛譚を堪能/約90分
テロップやナレーション、説明的なセリフに頼らず、市井の人々の悲喜こもごもの人生模様を宮崎弁による日常会話のみによって点描画の如く細やかに描き出す小松台東。
恋愛を扱った本作でも説明を極力省く作風は相変わらずで、ために登場人物それぞれの境涯や人物相互の関係性がすぐには見えないが、それだけに“分かってやろう!”と前のめりで鑑賞。
まさしく点描画のようにゆっくり、じわじわと見えてきたのは、登場人物に二十代以下が一人もいない大人の世界。
人生経験を積んで遠慮や気遣い、相手を慮ることを覚えた大人達の恋は直線的には進まず、そのウジウジ、ウダウダした感じはまるで恋愛初心者の中学生の如しだが、それだけに微笑ましく、殊に、慎重で思い切りの悪い男衆にはタイトルと同じ言葉を贈ってやりたい気分に。。。
その一方で、相手を気遣いながら徐々に距離を詰めていく大人の恋って、それはそれで中坊には真似できない渋みがあって素敵だなぁとも思わせてくれる、なかなかに味わい深い一作でした。
押せ押せな恋ができないのは一緒でも、中坊と大人ではその内実が違うのだ!!
役者では、苦境にありながらも持ち前の陽気さで場を活気づけていくスナックママ・沙織を陰影豊かな演技によって見事やりこなしたもたい陽子さんがとりわけ素晴らしかった。