U&D&O 公演情報 おぼんろ「U&D&O」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    45分間なのに物語の深みを感じた
    初めて「舞台の上」の、おぼんろを観た。
    彼らが本来持っている、うまさ、確かさ、ポテンシャルの高さを確認できた舞台だった。




    コメディとしての出来は★★ぐらいだが、作品の出来としては★★★★。
    間を取って★★★としたいところだが、星の数は作品の出来を優先した。

    ネタバレBOX

    オープニングで観客を引き込む強引さがいい。
    おぼんろらしいという印象。
    そういう持って行き方がうまい。

    しかし、せっかく観客を引き込んだにもかかわらず、それが本編であまり活かされてないと感じた。
    まるでヒーローショーのように(よくは知らないがイメージとして)、オープニングで、観客の拍手や声援よって舞台との一体感をつかんだならば、それを持続させる仕掛けがほしかった。

    劇場の舞台の上にあるおぼんろを観たのは初めて。
    今までのおぼんろは、いわゆる劇場ではない場所で、観客の間を縦横無尽に走り回っていた。だから、観客との物理的な距離も近く、台詞もダイレクトに観客に届く。
    また、舞台の上だけで演技をするわけではないので、観客は身体や頭を動かしたりしながら、役者を追ったりする。だから観客の舞台への参加意識は高くなる。

    それでけだけでなく、会場に足を運んだ全観客に役者が熱心に話し掛けたりする。なので、役者も身近に感じることになる。こういうことをする劇団はあまりない。
    つまり、「素」の「役者」である自分を見せた上で、そのまま続く芝居の中では「虚構」の「役」を演じるという、ある意味離れ業を見せてくれる。

    さっき、「どこから来ました」なんてフランクに話掛けてきたあんちゃんが、すぐに芝居の中で、架空の人物になっているのだ。
    これは意外とむずかしいことではないだろうか。

    「人」として近くに接してきて、芝居でも近くにいる。だから、おぼんろの役者に対しては、「友だち感覚」を感じてしまうことになる。
    だから、今目の前で行われているのは、「知り合いが出ている芝居」になってしまうのだ。
    そうした観客と一体感を醸し出すという演出が功を奏している。
    だからリピート率が高いのではないか。

    しかし、今回はそうした観客との触れあいはなく、普通の芝居として上演された。
    唯一の接点がオープニングである。

    だから普段の濃厚なかかわり合いができない代わりに、舞台の上からどう観客と濃厚さを増していくのかと思っていたが、結局、(ある意味)普通の演劇となった。

    とは言え、そのレベルは決して低くない。
    物語としての面白さ、末原拓馬さん、わかばやしめぐみさんのうまさが、45分間観客を引き込んだ。

    ただし、ユーモアと笑いはその中にあったものの、コメディ感はなかった。
    笑いの多めな、おぼんろだった。

    いい悪いではなく、コメディを観に来た者としては物足りなさを感じた。
    「コメディ」という言葉にとらわれているのではなく、そもそもこの企画は「コメディフェスティパル」なのだから、それを期待しないわけにはいかない。

    舞台と観客席、固定された演技場所、固定された上演時間、コメディという枠組みの中で、もっとおぼんろの良さを発揮できれば、素晴らしい作品になったと思う。
    そこが残念。

    ただ、今回の公演でおぼんろの良さを知った人も多いのではないだろうか。
    彼らの本公演はもっと濃厚で観客を魅了するのだから、そういう人にとってはいい出会いの場ではなかっただろうか。

    しかし、「コメディ」フェスティパルを観に来た人にとっては、もうひとつ不発感があったことは否めない。


    自由な感じの末原拓馬さんはうまい。
    そして、わかばやしめぐみさんのうまさ素晴らしさが十二分に感じられた作品だ。
    おぼんろという枠を超えても、その素晴らしさが発揮できるのではないかと思った。
    (普通に舞台の上で演じても)
    今回の6団体の中で一番印象に残った役者さんだ。

    ラストにウドが戻ってきた男に対して「お帰りグギャ」と言うのだが、これは「タケシ」ではなかったのだろうか。家を出てグギャと名乗っていた男が、自分の家に戻ったのだから。
    家に戻っても「心は巣立った」という意味で、あえて「グギャ」と言ったと深読みもできないこはないが、そうではなかったと思う。そこまでの伏線がないからだ。

    おぼんろは、衣装、小道具も大切な共演者だ。拾ってきたりしたものや自分たちの手作りで、彼らの世界観を作り上げる。
    だから、それらが打ち消されてしまう、今回の舞台セットはやはり邪魔だったように思えた。

    これから彼らは、舞台のサイズ大きくなるに従い、今までの手法が使えなくなることで、舞台の上と観客の間をどう縮めていくかが、今後の課題となろう。この公演では、それへの道を歩むためのヒントを得たのではないかと思った。

    0

    2014/09/29 19:03

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大