こわくないこわくない 公演情報 クロムモリブデン「こわくないこわくない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    これまでとは一味違って
    劇団にとっては新しい役者さんが多数出演。
    そのことで、これまでには描きえなかったニュアンスが舞台に生まれていたような気がします。

    観ていて時間があっという間、面白かったです

    ネタバレBOX

    冒頭から偽悪的にも思えるモラルハザードがてんこ盛りなのだけれど、舞台の切れから生まれる軽質さとともに、徒な嫌悪感を抱かせることなく物語に編み上げてしまう作劇の力があって、笑いつつ、そこからの展開にあれよと取り込まれてしまう。物語の設定や展開に差し込まれた、ありえないようなでも現実と完全に乖離させない誇張、児童ポルノ、育児放棄、人身売買、親の倫理喪失からひき逃げに至るまで、本来加害者である側の登場人物たちのロジックが、どす黒いのだけれど妙にあるあるで、キャッチ―で、しかも作り込まれたコミカルなテイストがあって、観る側に物語を手放すことをさせない、彼らの理屈とともに組み上げられ、滲み出してくるロール達のそれぞれが抱える感覚のひとつずつが、不思議な実存感とともに訪れる。

    それらは、男たちの自ら抗することのできない欲望などもこの劇団の持ち味である歪みとともに晒しつつ、でも、意外なことに、よしんば歪んでいても人がその根源にもつ情や女性たちの母性なども舞台に描き出していく。

    そうして、作り手がイノセントな少女たちや母性なども紡ぎ入れて、丁寧につなぎ広げていく物語の顛末を追いかけていくと、そりゃもう、手練れの役者達がクロムモリブデンならではの世界のデフォルメのありようだけでも十分にタフで可笑しいのですが、次第に対象となる子供たちの天真爛漫さというか無垢さが、その歪みの重なりや狭間をこともなげに乗り越え潜り抜けていく姿に捉われてしまう。

    「殺処分♪」とはしゃぐ彼女たちが置かれている境遇は、本来ドナドナが聞こえてきそうなシチューエションの哀愁があるはずなのだけれど、少なくとも物語の中の彼女たちにはその感覚がしなやかに欠落していて、そのイノセンスに裏打ちされた自由奔放さが、観る側に置かれた歪んだ世界をするりと潜り抜け、彼女たちの歩みや、さらには彼女たちの視座からの世界に観る側を取り込んでしまうのです。

    なにか、観ていて、世の中に蔓延する様々な杞憂に徒に縛られすぎずに生きることが、むしろこういう世の中にはとても大切なことのように思えてきた。そりゃ、当節何も知らずに自由に生きていけば、いろんなことに巻き込まれたりぶち当たったりこともあるのだろうけれど、でもそのおそれに縛られることなく世の中は歩めばビビッドで素敵な廻りも生まれる。なんだろ、社会のどす黒さは確かにあって、でもそれを憂いてただひきこもり息を詰まらせることはない。作り手がこんな世の中ではございますが、自分の思うがままに生きたとしても、頭でっかちな世間で喧伝されるようには「こわくない」んだよと、諭しているようにも感じられたことでした。

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    2014/09/29 01:22

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