満足度★★★★
水素74路線
数えると同劇団を4本も見て来た勘定になるが、路線と質を維持しながらコンスタントに公演を打っている。意外にも。というのは、まず劇団名が不思議君でwebのデザインもパンフやチラシに書かれる作者のコメントも全面拙さに満ちてる。素人でごめんなさい、と。で、作品とした場合の完成度を言えば毎回、詰めの所で素人っぽさを出す。終盤に向けて自転車のペダルを力んで踏み込むとチェーンがかつん!と外れてつんのめる。惜しいね、という具合。
でも基本は現代口語演劇で、人物の立ち方、呼吸感、雰囲気、ちょっとした間合い等、つまり非言語表現部分が饒舌に色々と語ってくれる所の面白さが軸だから、結末がどうなろうとあまり関係ない、と言えなくもない。ケーススタディ的に再現された人間の模様をじとッと観察する時間として成立するタイプの芝居。飛躍の度合いを「そりゃないだろう」「もっと行けるんじゃない」と批評しながらも見続けられる事がその証左だ。
今回は、途中、どう展開しても可能だがどうなるのか、帰趨を見るポイントが幾つかあった。未来男の「父」が結局誰なのかは、最後に判る事になっているが、結局誰だっけ?・・ま、それはどちらでも良い(それじたいにメッセージはない)。作者が明かすように人間と人間の接触についてのあれこれが、面白く見れたので私はそれで十分、多くは望まないという感じである。これで良いのか、とも思わない。ただし、表現の精度についての探求は今後もたゆまずやっていってほしい。