満足度★★
世界の不確実性
現代ドイツを代表する作家の旧作の日本初演でしたが、戯曲の面白さが伝わって来ない印象を受けました。
不法入国者の黒人の男と盲目の踊り子を中心に、癖のある登場人物達によって、自殺、犯罪、移民といった現代社会における問題や人間の存在意義について考えさせられる内容が、平行的に展開するエピソードの連なりで描かれる、晦渋かつ幻想的な物語でした。
ト書き的な地の文と普通の会話が入り混じった独特の文体が用いられ、さらにコロス的な斉唱で台詞を言う場面もあり、人称の定まらなさが印象的でした。
男性は棒読み的な人が目立ち、逆に女性は大仰な台詞回しが目立って、演技が噛み合っていないと思いました。ダンス的な表現も動きに切れが感じられませんでした。
ハープの生演奏や映像を用いた演出は印象的でしたが、作品の内容に深く関わっている様に感じられず、その場の限り効果に見えることが多くて勿体なく思いました。
特に放射性廃棄物を入れるフレコンバッグが沢山置かれた舞台美術や、転換作業をする人が防護服を着ていたのは、この戯曲でその様にする意図が分かりませんでした。原発事故を絡ませるなら、全体的にその方向に振った演出にして欲しかったです。