満足度★★★★
祝祭的絵巻物
インドの古代の物語を様式性の強い演技と打楽器アンサンブルの賑やかな演奏で描き、神事の様な祝祭性が圧巻でした。
物語自体は悪魔に憑かれた王と王妃の別れと再会を描いた単純なものですが、日本の伝統芸能に着想を得たと思われる、シンプルながら効果的な演出で幻想的で豊かな世界が広がっていました。
高い位置に設えられた円環状の舞台が客席を囲むという特殊な形状で、普段の舞台形状では感じられない様な高揚感を生み出していました。
その舞台形状の特性から、人が複数出るときは横一列の配置となり、絵巻物の様なヴィジュアルになっていたのが印象的でした。
通常は舞台として使われている部分を客席としていて、円環舞台の背後に見える2階・3階の赤い客席がアヴィニョン公演の会場の石切場の絶壁を連想させて印象的でした。
布と紙で作られた白一色衣装・仮面・小道具が広い空間に映えていて美しかったです。像を鼻の部分だけのオブジェで表現していたのがユニークでした。
様々な民族楽器を用いた8人の打楽器奏者の演奏が、情緒的なメロディーに頼らずリズムのみで雰囲気を盛り上げていたのが良かったです。演奏する姿もパフォーマンスの一部として存在感がありました。
PAや照明は用いているものの基本的に全て人力で表現する演出となっていたにも関わらず、一番最後の締めに像の鳴き声の録音を使っていて、興を削がれてしまい残念でした。