満足度★★★★★
極めた舞台 時代の危機感鋭く
吉野作造と10歳年下の弟、吉野信次を中心に据え、その兄弟のそれぞれ妻である姉妹、先々で出会う人々を通して、明治、大正、昭和と23年に渡る激動の時代に生きたひとびとを描く。
大正デモクラシーの時代から関東大震災を経て、軍国主義の足音が聞こえてくる昭和初期を舞台にしているため、国家や法律、天皇と軍など、この芝居のもつテーマはたくさんある。議会の存在感の薄さ、憲法改憲や集団的自衛権の行使容認など、大震災を一つの契機として、「国家の暴走」を危惧させるような世の中になりつつある現在の日本。「普通の人々」が右傾化し、「常識」と言われてきたものが威勢のいいほうに流されていく社会。初演から11年、4回目の上演だが、今回ほどこの戯曲の抱える予言的な警告が、ストレートに観客の心を揺さぶる時代はないかもしれない。