満足度★★★
戦後と戦前
映像と非リアリズムな動きを多用した演出で、ポップな表現の中にシリアスなテーマが描かれていました。
坂口安吾の『堕落論』が原案とのことで、戦後の人々の姿を個性豊かなキャラクター達で描いた物語でした。
前半でスポーツ(おそらくサッカー)の試合を戦争のメタファーとして表現しているのかと思わせて、途中から実際の戦争の話題が現れたのは個人的に説明的過ぎる様に感じられ、最後までスポーツの比喩の世界で物語を展開して欲しかったです。
白い伸縮性のある生地が舞台奥に漫画の吹き出しあるいは爆発の表現の様な形状に張られ、役者が演じない登場人物の台詞や場所を表す写真が投影されていたのがスタイリッシュでした。役者が映像の中の文字を動かしている様な演出が、あまり派手な効果は用いてなかったものの、色々な可能性が感じられました。
スクリーンは映像を投影するだけでなく、裏に役者が立って影で演技したり、もたれ掛かったり摘んだりして3次元的に変形させていたのが印象的でした。
プロジェクターが映像だけでなく照明としても用いられていて、天井からのライティングがシンプルだったのも、設備の整っていない会場でも上演出来そうで興味深かったです。
役者達の癖のある演技が魅力的で、特に武谷公雄さんと中林舞さんは身体表現にも惹き付けられるものがありました。