満足度★★★★★
すごい舞台でした!
かねてから、いちど観たいとおもっていました弘前劇場。
いろいろと面白い点は多かったのですが、なんといっても客席の雰囲気が劇場っぽくないのは印象的でした。
人がそんなに多くない夕方の美術館で、常設展を観ているときの空気、といったら良いのでしょうか。
観る前がそのような空気でしたので、とても難しい演劇なのかなと、期待半分恐れ半分で開演を待ち……。ですが始まってしまえば芝居にひきこまれ、気がつけばあっという間に終わりにまで心を連れていかれていました。
その場には存在しないはずの人もここにいる人たちに影響を与えているという意味で、それは存在しているのかもしれませんし、そのように考えましたときに、黒子というものが、その象徴のひとつであったのかもしれません。
など、今になっておもったりもするのですが、観ていましたときには、ただ切実に、今このときを生きている人たちの真摯なその姿や、他愛ない会話、そういう小さなことの集積で人は生きているのだと実感しながら、ただ諾々と心に入ってくる言葉を受け入れているだけでした。
なんていいいますか……。ちょっと今までに観たことないほど気持ちよくしてもらえる舞台といいますか……。
こういうことを考えながら生きていても良いのだとか、こういうことに不安を感じながら笑っていてもいいのだとか、見えるものを見えるまま口にしてもいいのだとか。
いろいろなことを肯定されたようで心地よかったのかもしれません。
これは演劇として面白かったとか、そういうことではないのかもしれませんが、私にとってこんなにも息のしやすい空間、時間はかつてなかったであろうというほどに居心地の良い…というのも妙ですけれど、そういう舞台でした。
客席との距離感が良い意味でこんなにも無いお芝居を観たのは初めてです。
しあわせな観劇。
長谷川孝治さんの作・演出の舞台、またぜひ観たいものです。