relife 公演情報 LOVE&FAT FACTORY「relife」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「犯人は誰だ!」的ドキドキミステリ
    パンフに書かれたあらすじから
    「死刑囚としての過去・消された記憶の行方」と
    「真実の愛の形」的なものを組み合わせた物語になるのかなあ、
    と想像してましたが、
    (想像は当たっていながらも)
    ある連続殺人事件の「犯人は誰だ!」的なミステリをうまく絡めていた為、
    一癖も二癖もある登場人物について、
    「この人は違うな?」
    「この人の行動怪しくないか?」
    と終盤までずっと自分なりに推理しつつ物語を楽しむ事が出来ました。

    ネタバレBOX

    (パッと見売れてなさそうな)アイドル3人組の前説から、
    いきなり部屋で寝ている男とその隣にいる妻(恋人?)とおぼしき人物、
    「記憶がない(昨日の、ではなく今までの)」という男に対して、
    「昨日ベロンベロンに酔って帰ってきたのよ」、
    と自分達が夫婦(恋人?)である事などを
    それとなく納得させての物語スタート、と思ったら、


    場面転じてゲスい敏腕プロデューサーに
    先のアイドル3人組(パストラミ)の
    プロデュースをお願いするマネージャーと、

    ゲスいが故に3人それぞれの身体を要求するプロデューサー、
    更には一番年下の未成年ながら自ら「アイドルになる為に」と
    身体を差し出すリーダーなど、


    案内パンフにあった人間関係構成図が段々と紹介されていきますが、
    いきなりそこになかったはずの線が登場し始め
    (妻と敏腕プロデューサーの関係など)、


    ニュースで流れていた「顔面ミンチ殺人事件」を
    追う刑事達の登場から更に物語が動き始めます。


    ・ 場面転換のテンポが(全部が全部ではないですが)
      基本的に良かったです。

      物語中(鑑識の人が愚痴ってましたが( ´ー`))、
      必要な小道具である椅子や机を自ら持ち込み
      場面を演じた上で小道具を片付けつつハケる役者と
      次の場面に入る別の役者達、

      シアターKASSAIは大道具、小道具をクルクルと
      入れ替えするのが難しい為、
      下手な?お芝居では場面転換ごとに暗転して
      いちいち総入れ替えを行ったりとする所を、
      前述のようにサクサク進行してくれた為、
      物語への集中が全く妨げられずに済みました。

    ・ 刑事が追っている以上、登場人物の誰かが関わっている(犯人?)であろう、
      「顔面ミンチ殺人事件」、
      通り魔的犯行かつ顔面をナイフでめった刺しにするという
      この恐怖の事件について、

      本劇の登場人物それぞれがそれぞれ一癖も二癖もあった為、
      「この人が犯人でもおかしくない!?」
      「この人はあいのりしての模倣犯になろうとしてるので違う?」
      「普通の人かと思ったら実はコイツも悪い奴?怪しくなってきたぞ!?」
      など、(今では珍しくなった)犯人が誰か分からない状態での
      ミステリ小説的な物語展開に、
      舞台観劇と同時に推理ゲームを楽しむ事が出来ました。

    ・ 「脳の記憶は消したが身体の記憶は残っている」という言葉に始まり、
      主人公が段々と元殺人鬼にして死刑囚「松本」であった事を
      断片的に思い出していく場面、
      (元殺人犯が今回も犯人、では普通すぎる物語になってしまう、と)
      「主人公は犯人ではない」とは思いつつ、
      最終的にこの主人公はどうなってしまうのか?
      序盤での「普通の人」としてのリサイクル人生(relife)を
      生きられるのか、
      あるいは殺人犯「松本」の復活になってしまうのか、
      物語の流れが非常に興味深かったです。

    ・ 殺人犯「松本」については、
      当時通り魔的犯行で被害者に致命傷を与えながらも、
      「自分が一番大切だと思う人に電話をかけ、その人が来たら助けてやろう」
      (致命傷なのでどちらにしろ助からないのですが)、
      というゲームを楽しんでいた、という過去から

      「愛情」が分からずにいたサイコパスな殺人犯、としての過去と
      終盤の妻とのやりとり、「松本」化してしまいながらも
      「(ナイフで刺して、愛を)試してもいいか?」と妻に問いつつ
      実際には自分を刺して自分自身の気持ちを確かめる、
      伏線からエンディングにかけて
      「うまくつなげてきたな」と思わせられました。

    ・ そもそも今回はボクラ団義中村さんの客演を観に行ったのですが、
      ボクラ団義での「善のおじいちゃん」や
      「悪役中高年(志士や悪徳政治家)」役とは大きく違う、

      本物語の中で「こいつが一番悪いんじゃないのか?
      (物語が悪い方向へ進む全ての引き金になっている)」
      ある意味主役すら食いかねない、
      エネルギッシュさとゲスさと弱い心も持った、
      敏腕悪徳プロデューサーを見事に演じてました。

      パストラミ3人が大接近してのアピールなどに対して、
      まったく表情を崩さず「くだらないね」と流す演技など、
      やはり演劇経験の長さ/深さが色々な面で生きてるんだなあ、
      と改めて感心しました。

    ・ 本物語の導入の更に前にあたるプロローグ
      (殺人犯「松本」改め人畜無害になった主人公が
      ヒロイン(妻)の家に来るまで)を
      無声芝居で演じられていたのが良かったと思います。

      家族といえる人を全て失った元アイドルが「金の力で」とはいえ、
      再び「家族」を得ようとする行為部分、
      下手に普通のお芝居で描いてしまうより、
      無声芝居で演じられる事で、実際表現されている内容以上に
      「きっとあんな事こんな事があったのだろうなあ」と
      想像力を膨らませるきっかけになりました。


    自分としてはひさびさのドキドキ「推理劇」を組み込んだ
    物語展開に本劇を心から楽しめた、と思います。


    ただ、数点気になった所

    ・ パストラミのリーダーにして、
      「顔面ミンチ連続殺人事件」の犯人について、
      今回のプロデューサー殺人未遂の理由はともかく

      ・ どうして連続殺人を行うようになったのか?

      ・ なぜ、パストラミの缶バッジを毎回犯行現場に残したのか?

      などの部分について、出来れば物語中で描いて欲しかったなあ、と。

      本筋は「ここではない」っていう意味で
      蛇足にならないように削ったのかも知れないけど

      同様に

      ・ 元刑事で殺人犯「松本」の検挙を機に鑑識へ転属した
        (実際の刑事/警察機構でそんな異動が出来るのかはともかく)
        その理由(わけ)も知りたかったですねえ。

      その辺、ラスト前、あるいはラスト後のエピローグ的に語られたら
      (自分としては)更に良かったかなあ( ´ー`)

    と、「この部分もっと深く観せて欲しかった」という部分はありましたが、
    観劇中ずっとドキドキさせられたミステリ要素などが非常に
    面白かったので★5つ、とさせていただきます。


    PS.感想書き終えてご飯食べてて気付きましたが、
      「顔面ミンチ殺人事件」、最後の被害者はプロダクション社長だったような?
      となると、
      ・ リーダーは無差別殺人ではなく「パストラミ」の障害になる
        人物を殺していった?
      ・ しかし、分かりやすい繋がりが見つかれば
        すぐに犯人にたどり着いてしまうのでは?
      など、ちょっと振り返り考察も楽しめるのがいいですね。

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    2014/07/26 17:36

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