満足度★★★★
デタラメな家族関係が面白い
まずは苦言から。
青山円形劇場で上演された本作、役者が派手に動き回るシーンも多い反面、役者の向きや位置関係が固定されたままに演じられる静的なシーンも多く、後者の場合、役者によっては延々と後ろ姿を見せられる羽目になってとてももどかしい思いをしました。
舞台をぐるりと囲むお客さんにできるだけ顔が見えるようこまめに体の向きを変えながら演じるのが円形劇場での演技術なのに、悪い芝居はこのタイプの劇場での公演経験があまりないのか、一観客として上のようなストレスを感じる結果になったのは残念至極。
ただ、そこに目をつぶるなら、様々な観方ができる、演劇的豊かさに満ち満ちたとても良い公演でした。
現実と幻想、地と図の区別の不可能性に迫った哲学的な劇としても、演劇によって演劇を考えるメタ演劇としても、また、全キャストがド派手な装いで現れて駆け回ったり踊ったりする目に楽しい劇としても楽しめますが、個人的には、主人公の妹で奥歯という名前の娘がじつはどんな様態で存在しているのか、それが徐々に明らかになっていく過程がとても面白かった。
そして本作、チラシその他にもある通り、ドサ回り一家を描いた家族劇でもあって、そのムチャクチャな家族関係も堪能。
家族というものについての社会通念のみならず、生物学の枠組さえも踏み超えたデタラメな家族関係は、これまでとは異なる新しい人類のあり方を示しているようでもあり、単なる遊び心の産物のようでもあり、とにかく面白かった。
この一家が登場するスピンオフ作品があったらぜひ観てみたいです。