満足度★★★★
人生の重みが現れた『あゆみ』
既に様々な団体によって上演されている柴幸男さんの代表作が青年座の創立60周年に合わせたアレンジが加えられて演じられ、若い役者だけで演じるときとはまた異なる魅力が感じられました。
役者が一人ずつ何もない素舞台に現れ開演前の諸注意をアナウンスして始まり、次第に今回新たに付け加えられた前口上となってそのまま本編に突入し、最後も同様の後口上が加えられていました。
ままごとが2011年に上演したのを観たことがありますが、その公演では役のチェンジのタイミングが小刻みで、フォーメーションや照明によって幾何学性が強調された音楽性とダンス性の強い演出でしたが、青年座版はパフォーマンス色が控え目で、普通の芝居に寄った演出となっていて、より幅広い層の観客にアピールするものとなっていました。
20代から70代までの役者がその年齢のパートを演じるのではなく、生まれてから死ぬまでを平等に演じることによって、特別な事件も起きない普通の人生を描いた物語の普遍性が強められていたと思います。
いかにも「演技しています」感の強い新劇的な演技スタイルに冒頭は面食らいましたが、すぐに違和感がなくなり役者それぞれの個性を楽しむことが出来て、どの様な演出や演技でも形になる、この戯曲の懐の広さを感じました。