満足度★★★★★
力のある作品
一言で言えば「力のある作品」…「力作」でも「力のこもった作品」でも、ましてや「力んだ作品」でもなく、観る者をグイグイ引きつけるその力がスゴい。
傷害事件を起こした女性に接見する国選弁護人というオープニングから、黙秘を決め込む彼女の過去に移り、以降は昭和43年、東大の学生運動のセクトの1つが中心に描かれる、という構造。(その構造にちょっと『砂の器』を想起)
昭和43年にすでに物心ついており当時の世相も記憶にある身として「そうか、アレはあの頃のことだったんだ」と改めて認識するする一方、じっくりと描かれる学生運動の様子にも引き付けられ、さらにサスペンスフルで推理劇のような真相にはもうワクワク。
そんな過去が犯行に深く関わっていることが提示される終盤は、重さもありつつ、救いの余地をちゃんと見せて後味は決して悪くない、どころか、感動すら憶える。
この作品、これが三演目というのもよくわかるし、しかし「いつまでも過去の遺産に頼っていてはクリエーターとして失格」と今回で封印するという主宰の潔さもまた見事。封印前に観ることができて本当に良かった。