満足度★★★★
【B】序盤の「寄宿舎」は雑踏に終ったが、とても高貴な翻訳劇である
阿佐ヶ谷の地下で、こんな高貴な物語を紡ぐとは衝撃的である。
少女の「嘘」が教師、親類、クラス・メイトの人生をも変えた、アメリカ片田舎の事件を追う。
「黒板」と西洋家具が連結した舞台装置はシック。音響も最小限に控えている。
この空間に対し、私が抱いた感想は次の通りである。2013公開映画「『ムーン・ライズ・キングダム』の色調だな」と。
タイトル『子供の時間』。英訳すると「KINDAR HOUR」。「黒板」に パリのカフェ従業員の書く字体で2時間10分占領する。(同文以外は消されている。)
これが、映画冒頭の「字幕」がアンティーク化するイメージと ぴったりだったのだ。
10代の「問題児」メアリー・ティルフォードに周りの大人が翻弄し、描かれるテーマも 「モラルと権威社会」で、ところどころが重なった。
いかにクラス・メイトを掌握していくか。いかに、祖母を騙し、大嫌いな寄宿学校を破綻させるか。
「問題児」を、滑稽に、子どもらしく、それでいて計算高く演じたのが荒川 真琴だった。
別の、彼女が登場しないシーンであっても、舞台袖にいながら他のキャストと共演する離れ業をみせた。それは、脚本どうこう以上に、荒川の演技に答えがあるように思う。
いやあ。子どもは残酷な生き物だ。