満足度★★★
吉右衛門さんが圧巻の夜の部
休憩込みで5時間近くの長丁場でしたが、だれる場面もほとんどなく、子役の初々しさからベテランの妙技まで歌舞伎の様々な面白さを楽しめました。
『蘭平物狂』
尾上松緑さんの長男で今回が襲名披露となる左近さんが、劇中で松緑さんと親子の役を演じていて微笑ましくもしっかりとした演技をしていて、見応えがありました。
あまり展開も無いままに唐突に立ち回りになり物語としての面白みは無いのですが、アクロバティックな技が沢山盛り込まれた立ち回りが賑やかでした。ラスト直前で口上があり、晴れやかな雰囲気がありました。
『素襖落』
使いで伺った先でもてなしを受けたことを隠そうとして、それを知った大名にからかわれるという、狂言を元にした舞踊劇で、松本幸四郎さんの酔っ払いの演技と市川高麗蔵さんの色気のある踊りが魅力的でした。
『名月八幡祭』
田舎から反物を売りに来た真面目な男が芸者に心を奪われて、騙されたのを知って発狂する凄惨な話で、古典的な様式美はあまりないものの近代的なドラマ性の高さに引き込まれました。雨(新しい歌舞伎座になってからの初の本水使用とのことです)の中で女を殺めた男が御輿の様に担がれて退場した後、誰もいなくなった舞台に月が昇り、雨で出来た水溜りに月影が映る終盤の展開が強烈な印象を残しました。
中村吉右衛門さんが人の良い田舎者から狂人への変化を強烈に演じていて素晴らしかったです。
この演目の開演は19:30と平日の仕事帰りでも間に合う時刻なので、幕見でこれだけでも観る価値があると思います。