満足度★★★★
言葉・ダンス・音楽
死を扱った内容ながらもシリアスな要素だけでなく狂騒的な陽気さがある作品で、言葉とダンスと生演奏の音楽が等価に扱われたパフォーマンスを通じてイメージの繋がりの豊かさを感じました。
事故で親を亡くし、人と話す気力を失い棺桶の中に引きこもる男が、花札に描かれている花達に出会って話すうちに死を受け入れて立ち直って行く物語で、花の名前や植物の部位名を用いた駄洒落や、「花/話す/離す」「死期/指揮/四季」といった重ね合わせや、花言葉といった言葉の豊かさを活用した台詞が楽しかったり、物悲しかったりと多彩な情感を生み出していました。伝言ゲームや役の入れ換えによる言葉の伝わらなさの表現がユニークでした。
冒頭のユニゾンの歌が繰り返される度にパートが分かれてハーモニーや対旋律となり、それぞれの個性が立ち上がって行くシークエンスが、ラストではユニゾンのダンスが次第にそれぞれの動きに分岐して行く演出で表現されていて(植物が育ち、枝が分かれて行くイメージが感じられました)、冒頭のシーンが最後に繰り返されるという良くあるパターンにひねりが加えられていて見事でした。
前半でスズキ拓朗さんのソロダンスがあり、ダイナミックな動きが気持ち良かったのですが、物語の構成上は取って付けた感がありました。
小劇場B1という会場は基本的に客席がL型に2面になる形状なのですが、それを活かした空間の軸を斜めに取った演出が効果的な遠近法を生み出していました。
唯一舞台上にセットされた物である棺桶や、そこに投影される簡易なプロジェクションマッピングの使い方も良かったです。
脚本・演出・パフォーマンスとも良くて引き込まれましたが、親の死や植物のキャラクター等、前作の『さいあい』と被る要素が多かったのが勿体なかったです。良く言えばカンパニーとしてのスタイルが確立されているということですが、もっと多様な可能性を秘めていると感じられる集団なので、さらなる展開を見せて欲しいと思いました。