満足度★★★★
獅童VS片桐! 海峡の海のように終始重く暗い。
いじめの加害者と被害者の関係がそのまま継続し、
看守と囚人の関係が、内面では実は逆転している。
看守・体制側が囚人を更生させる構図をそのまま、
いじめる側がその対象を「守って教育してあげる」
という名目で追い詰める、という陰湿な恐怖。
花井はまさしく演じる獅童さん本人のカリスマ性
の部分を最大限に利用して囚人仲間を懐柔していく。
対する片桐さんは、コメディの要素を一切封印し
受け手に回る苦しい演技が続く。
いじめにあっていた当時から現在に至るまでも
常に劣等感にさいなまれ、自分の仕事場にも囚人
という立場で再び出現し、妻ともうまくいかずに
別れて最後に残された女性さえも、すでに相手の
手中にあったという絶望感はすさまじい。
これまでの人生で常に関わってきた「青函連絡船」
の航行も終わり、その最後の便でまた大事な人が
去っていくのも切ない。
終始、重く暗い物語の中で、ダリア役の水野愛子
のダンスのみが一筋の光として温かさを伝えていた。
しかし、それもまた彼の支配下にあったという
展開に劇中の斉藤(看守)同様のやりきれなさを
感じてしまう。
「よみうり大手町ホール」のこけら落としシリーズ。
メインの方々のキャラクターが強い分、どうしても
看守・囚人らを演じた俳優さんたちの見せ場が
作りにくい話になってしまったのが残念でした。